ゲゲゲの親父様は一週間の内、三日はお店に通うようになってきました。ただ、恋仲の女性と一緒に暮らしているため、そう頻繁に本は買えないそうです。
「(だからって立読みはよくないです。お座敷を使っているとはいえ同じく買いに来てくれた他のお客さんまで立読みして良いのかを聞いてきます)」
「ムジナ殿、蹴るでない。本が読めん」
ボスはお店のお座敷に居座るゲゲゲの親父様の背中を叩き、ドンと親分も頭突きしたり、唸って威嚇を繰り返している。
まあ、そうなりますよね。
あの子達の定位置や寝床として使っている場所に腰掛けているわけですから、彼らがあんなに怒るのも仕方ない。と、考えていたら、ドンがゲゲゲの親父様の頭に乗り、巨大化した。
すると、当然ながらゲゲゲの親父様はぺちゃんこに潰れてしまった。普通なら死んでいる状態なのに、どうやって生きているんでしょうか?
「あ、持っていっちゃった」
トタトタと走っていくドンと親分、ボスの三匹を見送って山積みになった本を一つずつ棚や台に戻す。せめて、連れていく前に片付けをしてほしかった。
「景さんちゃん、匿って!」
「旭さん、お久しぶりです。お座敷の方へどうぞ」
久しぶりに会ったかと思ったら、また逃げてきた旭さんをお座敷の方へと案内し、私は本の巻数を間違えて置いていくお客さんの後を手直しします。
「姐さん、此処に旭来てねえか?!」
「長谷川君、どうかしたんですか?」
旭さんよりも焦った顔付きの長谷川君に驚きつつ、おうむ返しのように質問に質問で返したことを訂正し、「こちらにはまだ来ていませんよ」と伝える。
ウソは苦手なんだけど、誤魔化せていますかね?
「旭さんに何かあったの?」
「離縁しようとしやがったッ」
「……どういう、ことですか?」
「阿燗とオレに言い寄る女が居るんだが、ソイツに『お前がいると二人は幸せになれない』とか言われて自暴自棄になってやがるんだよ。ったく。オレ達がそんなんで離れるわけねえだろうが」
────ドロドロとした感情が見える。
お座敷の方に隠れている旭さんに、チラリと視線を向けた長谷川君は「落ち着いたら帰ってこいよ」と告げ、そのまま走り去ってしまった。
私の誤魔化しはダメだったみたいですね。
最初から分かっていたことですけど。
やっぱりバレてしまうと申し訳ない気持ちになります。やっぱり、こういうことは慣れている人に教えてもらうべきなのかな?
ちょっとだけ、ほんのちょっぴり、不安でそんなことを考えてしまいました。