馬車を降りて、居間の方まで案内した山県卿と川路大警視の二人の視線は対照的です。国のために殉ずる事を強いる目、私を按じて見つめる目、どちらも本心です。
川路大警視はご家族でお父様の歌舞伎を見るために通ってくれた事もあり、そちらで少しずつ交流を交わしている。そのため私の身体の事は知っている。
「景の力を使うために明治政府の奴らはオレを戦争に巻き込むって話しか。もう刀を置いた剣心の代わりに、今度は景の事を利用するつもりか?」
「嗚呼、その通りだ。日本と違って清国の土地は広大。戦力差は万を優に越えるだろう。英国で使ったという機巧人形を使えば大幅に戦力を補え、人間の死亡者は格段に激減する。何故、出し渋る?」
「……お言葉ですが、私は使った訳ではありません。彼らには自我があり、手助けをお願いしているだけです。確かに彼らは機巧人形です。────けれど。人のように考えて喋ることは出来ます」
「相楽殿、それはつまり…!」
驚愕する川路大警視に視線を向け、彼の考えた事を否定する。真夜中のサーカスとは無関係であり、どちらかと言えば「からくりの君」に登場する
ただ、他の
「ハッキリと言えば戦場には不向きです」
「───その言い方だと、まるで戦場に適した人形を作ることが出来るように聞こえるが相違ないな?」
山県卿の指摘に左之助さんは言い返そうとしてくれたけど。それを静止し、ゆっくりと山県卿を見据える。此処に何度も来ている時点で、彼はその存在をとっくに知っていることは、私にも分かっているんです。
ゆっくりと深呼吸して、山県卿を見つめる。
「相違ありません」
「では、そちらに手助けしてもらいたい」
「借りたい」ではなく「手助けしてもらいたい」。良心回路の事を話せば、直ぐに利用する方法を変えて、私の事を取り込みにやって来る。
本当、すごい人です。
こんなにすごい人でも脚気になってしまうほど危険な場所が戦場であり、私が最も恐ろしく怖いと思っている場所を歩んできた人、山県有朋────。
この人の野望は止まることを知らない。
「私の夢に君は必要だ」
きっと、左之助さんと出会う前に会っていたなら心酔してしまっているほどに彼の影響力は凄まじい。