しとりとひとえを個魔の方に預け、私は左之助さんを独占してしまった。母親にあるまじき行為だと反省し、一晩中ずっと考えて、ようやく決心しました。
私は、山県卿の案の一部を受け入れる。
ただし、人を殺す機巧人形ではなく日本の軍人を守って無事に日本へと連れ帰る救護班と護衛班のみです。戦闘は自己防衛を行うときだけ。
極力人を傷付けず、自分も傷付けず、平和に帰ってきて貰えるなら私は、それだけで十分です。友人知人を亡くすより味方を増やし、私は護国に徹します。
「私に人を傷付ける覚悟はありません。山県卿、いくら貴方にとっては只の使い捨てに出来る人形でも、私の大事な家族です。どうかご配慮をお願いいたします」
「清国との戦争には出来るだけ手助けする。しかし、清国の人間を傷付ける事は出来ない。随分と曖昧で稚拙な考えだが、私はその意見に則って行動しよう」
「……ありがとうございます」
ゆっくりと伏していた頭を上げ、山県卿を見遣る。すると、彼は静かに「その目元の腫れを見れば分かる。何百回と思案を繰り返し、この場に居るのだろう」と言い、私の事を労ってくれた。
嬉しいけど。
素直に喜ぶことは出来ません。
私は「家族に戦争に向かえ」と言うのです。
「相楽、君もだ。
「……その言葉がテメェの本心なら受け入れてやる。だが、もしも次に景を泣かせるようなふざけたことを言いやがったら明治政府をブッ壊す」
「肝に銘じておこう」
そう言うと山県卿と川路大警視は玄関へと向かって歩きだし、私と左之助さんも見送りに向かう。静かにお辞儀を送る途中、お塩を撒こうとする左之助さんに驚き、慌てて彼の事を止める。
二人とも国を思っての行動ですから、ハッキリと悪い人とは言えないんです。怖いから、危険だから、そう思って遠ざけておける場所ではもうないんですね。
みんなが日本のために頑張っていく。
私に出来ることをやるだけ。
例えそれで恨まれても、私に出来るのは人を殺すのではなく人を活かすために少しでも前を向くこと。最愛の家族のために、私だってやってみせます。
「景、本当に良かったのか?」
「……はい。私だけが綺麗なままで生きていける訳ではありません。それならあの世でも家族のために出来ることをしてあげたいです」
「縁起でもねえこと言うなよ」
「…………フフ、そうですね」
ごめんなさい。ありがとうございます。