「ごめんくだせぇ、ここにぬらりひょん様が居ると窺ったんですが」
そう叫ぶ声が聴こえたかと思えばトタトタと廊下を走る音が聴こえ、足取りの軽さからひとえだと判別しながら書斎の戸を開ける。
すると、私の目の前を通りすぎて、また戻ってきたひとえはワクワクとしたように目を輝かせて、「かーさま、鬼さん!鬼さん!」と言いながら、私の手を握ると駆け足で廊下を歩き、玄関へと案内してくれた。
鬼?と首を傾げながら玄関の戸を開け、おでこの真ん中に角の生えた
ぬらりひょんの率いる百鬼夜行の妖怪であり、ぬらりひょんの側近を務める妖怪朱の盆を見つめて、暫しの困惑と戸惑いを抱きつつ、「とりあえず、此処では何ですから」とひとえに案内を任せ、私はお茶とお菓子の用意を進めるために台所に向かう。
「(お煎餅のほうが良いでしょうか?)」
そんなことを考えながら、クッキーとお煎餅をそれぞれ器に移し替えて、お茶を用意して居間に戻ると、ひとえと朱の盆はあや取りをしていた。
「フフ、ありがとうございます」
「あ、いや、ワシは何も…」
「少し人見知りをするこの子が楽しく笑っていますから、貴方は悪い妖怪ではないんでしょう?」
ひとえも「しゅーちゃん、いいこ!」と抱きついて、よしよしと彼の大きなおでこを撫でて、朱の盆の顔を更に真っ赤に染めています。
フフ、本当に優しい妖怪です。
「西洋菓子、美味い!」
「うまい!」
「美味しい、ですよ?」
そう二人に言い、私はお煎餅を食べる。
クッキーも美味しいですけど。お煎餅屋さんが作ってくれた醤油煎餅は格別です。大好きなお餅やお団子に匹敵する美味しさに私は満足です。
……それにしても、ぬらりひょんの事を訪ねに来ていた筈なのに、ひとえと仲良くお手玉やあや取りを楽しんだり、お菓子を食べて仲良く笑っています。
「景、
「……ぬらりひょんのしりあい?」
「よし。とりあえず、一発ぶん殴る」
「左之助さん?あの、相手はまだ子供ですから」
「はあ?どう見てもオッサンだろ」
オッサン?
いえ、私の目には普通の朱の盆が見えますけど。ああ、なるほど、朱の盆には人に化ける能力がありましたから、霊視の出来ない左之助さんには、普通の人間として認識してしまっているわけですね。
「左之助さん、ダメですよ。本当はひとえと同じぐらいの年齢かも知れませんから」