「ん!母様、親分の家に行こう!」
「え?お家はここなんじゃ?」
「かーさま、はやく!」
草履の紐を締めたしとりは竹刀袋を抱えて、中庭に立っている。ひとえも雪駄を履いて、ワクワクと私の事を見つめています。
どうしましょうかと悩んでいると、ドンとボスに背中を押され、それならせめてお土産を用意しようと袖の中にお菓子や紅茶の茶葉を風呂敷に包み、入れる。
「ん!いざや出発!」
「おー!」
「えと、おー?」
楽しそうに歩くしとりとひとえの後ろを歩きつつ、私の傍を歩いてくれるドンと親分、ボスの三びきの事を見下ろす。フスフスと鼻を鳴らしてますね。
「(左之助さんに書き置きしてない…)」
すぐに、帰れますよね?と少しだけ楽観的に考えながら歩いていると、徐に大通りを離れ、路地に入ると構造的にあり得ない分かれ道に入り、進んでいく。
ふと、景色が変わる。
「おお、糸色殿!」
「お婆様?」
割烹着を着た砂かけ婆の姿に戸惑いつつ、立て札を見ると「妖怪長屋」と書かれたものを見付け、求人や瓦版、他にも沢山のものが並んでいる。
「しとりとひとえも来たか。ほれ、砂饅頭」
「ん!ありがとう、んー!」
「ぱさぱさ!」
二人とも喜んでいるのか困っているのか分からない反応を見せて、私も砂のお饅頭を貰い、恐る恐る口に含み、ゆっくりと咀嚼してみる。
……ジャリジャリしている。
けど、土や砂ではありませんね。むしろ甘さはサトウキビを使って作った砂糖に似ています。ジャリジャリしているけど、癖になる味わいです。
しかし、美味しいですね。
「母様、どう?美味しい?」
「えぇ、美味しいです」
「それは良かったわいのう」
にっこりと笑った砂かけ婆に案内され、妖怪長屋に入るとお酒を浴びるように飲む前掛けを掛けたお爺ちゃんと将棋を打つ妖怪を見付けました。
アレは、子泣き爺と手の目ですね。
手の目は、凍座白也に私の姿だと言われたことありますけど。私はあんなに禿げていませんから、絶対に違うと思います。
違うよね?と自問自答を繰り返しながら、妖怪長屋の寮母室に入り、妖怪達に襲われないように配慮を受けつつ、親分の借りているという部屋に向かう。
「ん?なんだ、おまえ」
「(カワウソが喋っていますね)初めまして、相楽景と言います。この子達の母親です」
「かわうそちゃん!」
「ん!またお魚釣りしにきた」
「おー、なら森の方に行こうぜ」
しとりとひとえの交友関係が人から妖怪まで広がっています。いえ、まあ、戦闘員にもお友達がいるくらいですからね。