「傷や痣というには肌の質感は変わらない。日に日に大きく大きくなっているとは聞いていたけど、どうにも普通の病気とは違うわね」
「そう、ですか」
私の首筋に出来ていた痣は日に日に大きくなり、今では顎下に届き掛ける稲妻模様に変化し、まるで私の顔を目指しているように伸びています。
日本一の名医たる恵さんでも診察して識別できないということは、おそらく妖怪の仕業でしょうが、私の身体に取り憑いている影響なのか。
定期的に煤けています。
『地獄の炎』と『火のモヂカラ』を宿す私の身体に取り憑いて、まともに行動できるとは思えませんけど。既に左肩の辺りまで痣は伸びている。
「恵、景は大丈夫なのか?」
「問題ないわよ。ただし、私に九能を押し付けて、のらりくらりと逃げていた事はきっちりと話して貰うつもりだけどね!」
「ひぃんっ」
「泣いても許さないわよ、景さん!」
むにむにっと頬っぺたを両手で挟まれ、情けない悲鳴を上げながら恵さんに怒られ、ひんひんと半泣きになる私の姿を情緒の可笑しくなったような目で見つめる左之助さんにまた「ひぃんっ」と半泣きになる。
「母様、泣いちゃった!」
「かあいいね」
「うう、娘達だけが癒しです」
よしよしと私は二人の頭を優しく撫でていると、恵さんが「貴女ね、もっと危機感を持ちなさい。取り憑かれているのよ?」と言われる。
分かっています。
分かっているからこそ、平常心を保とうとしているんです。少しでも意識を変えると絶対に乗っ取ろうとするはずですから、普通に過ごすことが大事です。
流石にモヂカラを貫通する能力は無いようですが、私の身体に取り憑いているだけで、相手も辛いはずです。現にソウタロスは取り憑いて、直ぐに耐えきれず、飛び出していましたからね。
「かーさま、考えてる」
「ん。いつも考えてる」
「おめえらもこうなるのかねえ?」
私の考え込む姿で話題を作る左之助さんとしとりとひとえの三人を見つめる。そこまで変な風に見えますか?と聞きたい気持ちを抑えつつ、目を閉じる。
そもそも私の身体に取り憑いている妖怪の所属も気になります。日本妖怪か西洋妖怪か大陸妖怪か、それによっては対応を変えないといけません。
「景、隠し事はなしだぜ?」
「……わかっていますよ」
今度は、ちゃんと教えます。
流石に転生者に関することを教えることは出来ませんけど。しっかりと左之助さんにも教えられるものは教えるつもりです。
騙して悪いが。は、ないので大丈夫です。