某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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蝕み 急

私の身体に憑依した妖怪は依然として逃げる素振りは見せず、ゆっくりと私の身体に痣を伸ばし、今はもう左側の二の腕まで痣は広がり、顔も左目に届きそうになっていて、左胸から脇腹にも届きそうです。

 

「オレの女の身体に取り憑きやがって」

 

「言っても仕方ないです。左之助さん、背中の方を拭いて貰えますか?」

 

「ん、ああ」

 

左腕は使えるものの、気がつけば無意識的に左之助さんの手や袖を握ってしまいます。恐ろしき純愛過激派の妖怪ですが、愛は強制するものではありません。

 

そう思いながら動かしにくい左腕の代わりに汗を掻いてしまった背中を拭いて貰い、ゆっくりと布団に寝転び、また自分の身体に向かって『出』のモヂカラを与える。

 

妖怪や幽霊を体外へと弾き出すイメージを持っているんですけど。どうにも私の身体に完全に張り付いているというわけではなく、何かを媒介に私の身体に取り憑いているみたいですね。

 

「……細い身体だな」

 

「? 何か言いましたか?」

 

「いや、何も言ってねえよ。それより妖怪が景から出てきたらぶん殴れば良いんだよな?」

 

「はい」

 

とは言っても、それは賭けになります。

 

今でさえ中々に出てないわけですし。このまま飛び出してきたのなら確実にパンチを当てて欲しいのですが、そう簡単には行きません。

 

「(……心臓を掴まれる感覚がある。やっぱり私を苦しめて、介護する左之助さんの姿を見ようとしている。過激派は時として牙を剥く)」

 

本当に危険な存在です。

 

まあ、園田君と百合さんの前世の世界線では当たり前のカップリングだったわけたけど。どうして、私の『前世の記憶の保持』は稼働しようとしたんでしょうね。

 

「左之助さん、お願いが」

 

「良いぞ」

 

食い気味に答えた左之助さんにビックリしながらも、ゆっくりと着物の中に手を戻し、襟元をずらして、上半身の素肌を少しだけ、痣を見えるようにする。

 

「私の身体に二重の極みを撃って下さい」

 

「は?待て、そんなことしたら」

 

「……私は、死にます。妖怪が阻止してくれれば生きていますけど。左之助さん、今のお願いを聞いてくれるんですよね?」

 

そう言って私は手を広げて、二重の極みを受け止める覚悟を決めました。例え死んでも左之助さんに殺して貰えるなら幸せです。

 

「……分かった」

 

私のお願いを聞き入れてくれた左之助さんが拳を振り抜いた瞬間、私の身体から妖怪の顔が飛び出し、寝室の窓を突き破って塀に激突する。

 

アレは、妖怪の邪骨ですね。

 

ぬらりひょんの仲間だったはずですけど。

 

「ひ、ひえぇぇ……!」

 

「まてやゴラアァ!!」

 

……多分、大丈夫ですよね?

 

 

 

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