「母様、魔法使いたい」
ある日の事です。
ロンドンで買ったアーサー王伝説を和訳した小説を手に持ったしとりが、キラキラとした純真な眼差しを私に向けているのが見えました。
魔法。それは勇気の力です。
「魔法戦隊マジレンジャー」。その世界に存在する地底冥府インフェルシア。その冥府に住まう魔獣達は西洋妖怪と言って差し支えない存在────。
しとりのお願い、どうしましょう。
「しとり、どうして魔法を使いたいんですか?」
「ん!わたし、母様にお花あげたいから」
「フフ、とても嬉しいです♪︎」
本棚の整理を一旦やめて、ソファに座っているしとりの事を抱き締め、よしよしと頭を撫でていると絵本を読んでいたひとえも頭を押し付けるようにしてきたので、同じように優しく頭を撫でてあげる。
「ん!ひーちゃん、いい子だねぇ」
「んへへぇ」
「二人とも仲良しですね。……さて、魔法でしたね。先ずはそうですね(ドクトルに連絡して何か魔法のステッキ的な物を作るのも可能ですけど)」
安全性を考えると、私の持っているひみつ道具「魔法事典」を小さく体系化し、分かりやすく使える簡易魔道書「
問題は、どの魔法の体系化に絞るか。
私の描いた物は繋がるけど。
こうして、ひみつ道具を介して転送・送信すると「物語」は繋がることはありません。しとりとひとえが読む漫画や絵本も繋がる可能性もあります。
────けれど。認知の拡大は二人で止まっているため「物語」は繋がることは無く、二人には安心して読んで貰えるわけです。
流石に危険な本は別館に保管しています。
「しとり、先ずはその本を開いて下さい」
「ん!」
しとりはソファに座ったまま一番最初の頁を開き、私の方を見上げます。もうすぐ女学校にも通いますからね、しっかりと覚えておきましょう。
「では、私の言葉を復唱して。自分の変わりたい物を想像しましょう。『マージ・マジロ』」
「ん!『マージ・マジロ』!」
私がそう呟くと私としとりは青い煙に包まれ、私は眼鏡をかけた猫の姿に変身する。しとりも成功したのかとソファを見ると、
「ん!私、でかくなった!!」
「あら、あらあら……」
ひょいっと私の事を抱き上げるしとりにビックリしながら、私は猫の姿のまま大きく綺麗に成長してくれたしとりの笑顔に、ほっこりと安堵してしまいました。
ああ、ちゃんと大人になって、大好きな人と幸せになってくれるんですね。安心、しました。大きくなった貴女を見ることが出来たのは、最高のプレゼントです。
ありがとう、しとり。