チラリと酒処の暖簾を開け、外の様子を確かめると左之助さんが比留間兄弟をボコボコにしている瞬間だった。そういえば緋村剣心と左之助さんが決闘して以降、逃げるように東京を出ていっていたわね。
「ざ、斬馬刀の無い野郎に負けるかァ!!」
「阿呆。斬左だけがオレの通り名じゃねえよ」
比留間(弟)の振るった切り下ろしの斬撃を左之助さんは手の甲で容易く弾き、痛烈爽快なアッパーカットで比留間(弟)の顎をカチ上げ、見事に彼の巨体を腕力だけで吹き飛ばした。
まあ、当然の結果でしょうね。
左之助さんは私の作った持久力の赤筋と瞬発力の白筋を同時に鍛えるトレーニングを継続しているから筋肉の性質その物が混色のピンク色になり、一般的成人男性の何倍も強くなっているのだ。
私がやったら三ヶ月は筋肉痛でまともに動けなくなるハードなトレーニング内容だけど。今の左之助さんにとっては朝飯前の簡単なトレーニングだろうと思う。
「ったく。此方は親探しで忙しいってのに。おい、怪我してねえか?」
「う、うん、じゃなくて、ありがとう」
「別に気にする必要ねえさ。飯の邪魔してきた奴らを追っ払っただけだしな」
パンパンと手の汚れを叩いて払う左之助さんは尻餅を突いている女の子に片手を差し出す。そういう事を平然とするからモテると何故気付かないのか。
ここにお嫁さんが居ますよ?
「天ぷら、天ぷらぁ~っ」
「ご飯は逃げませんから拭きましょうね」
喧嘩して直ぐに天ぷら蕎麦を求めて戻ってきた左之助さんの少し汚れた顔を濡らした手拭いを使って拭きつつ、チラチラとお店の外から見てくる子供と、さっきの左之助さんに助けられていた女の子に「あなた達も一緒に食べる?」と聞きながら手招きする。
「……どっかで見た覚えがあんだよな」
「もう、お兄さんたらナンパ?」
「浮気ですか?」
「いや、浮気じゃねえよ。……あー、ガキの頃に」
魚と野菜の天ぷらを頬張りながら考え込んでいる左之助さんを一先ずは置いておき、二人に料理帳を差し出し、二人のご飯を決めて貰う。
「あっ、そうだよ。お前、右喜か!?」
「な、なんで私の名前を…まさか前から私を付け回してたのアンタね!?」
「まあ、まどろっこしいのは無しだ。相楽左之助、ちいと十一年ぐらい遅れたが帰ってきたぜ」
「…………え?ん?左之助兄ちゃん!!?」
ガチャンッ!と湯呑みを倒す勢いで机を叩いて立ち上がった女の子、左之助さんも流石に分かったみたいで、私も安堵の息をほうっと吐き、お茶を飲む。
私と左之助さんの目の前にいる二人の子供、東谷右喜と東谷央太は左之助さんの親族であり、私の義理の兄弟・姉妹になる人達なのだ。
気付いてくれなかったら私が、それとなく伝えるつもりだったけど。左之助さんが自力で気付いてくれて本当に良かったです。
「じゃあ、こっちのおばさんが兄ちゃんの嫁?」
「おばっ、おばさん……」
「右喜、景はお前の一つ下だ」
「はあぁっ!!?」
な、泣きそう、やっぱり老けて見えるかなあ…。
相楽夫婦の営み話を書いてみようかと悩んでいるのでアンケートします。
一応、需要があれば書いてみるつもりです。