「……景が猫に?」
「お腹に顔を押し付けるのは止めて下さい」
ペチペチと左之助さんの頭を叩いても止めて貰えないので、人間の姿に戻っても止めてもらえず、ペチペチと左之助さんの頭を叩いています。
そういうのはダメです。
やめましょう、やめてください。
「ん!父様、私も大きくなった!」
「……元気な景だな」
「ん!んー!私はしとりだよ!!」
電光丸を抜いて怒るしとりの攻撃を躱して、楽しそうに笑う左之助さんにようやく降ろして、変身魔法で大人化したしとりをキラキラと見つめるひとえをお膝の上に乗せてあげます。
ポフンと音を立てて、しとりは子供に戻りました。魔法の力は、無限ではありませんからね。しっかりと魔法事典にも使用時間を記載しています。
もっとも、しとりは子供に戻っても変わり無く左之助さんに電光丸を振るい、高圧電流を受けても倒れない自分の父親に天真爛漫な笑顔を向ける。
本当、しとりのバトルセンスは左之助さん以上ですね。あのまま大きくなれば、いずれ世界最強になるのは間違いない。けど、剣路君は勝てるのでしょうか?
「しとり、さっきから何で左手で刀持ってる?」
「ん?ん、んー、分かんない…?」
「オレに加減する必要はねえぞ」
「……ほんとう?」
少し迷うようにしとりが呟き、左手に持っていた電光丸を右手に持ち変えたその時だった。
しとりの振るう電光丸を殴って迎え撃つ左之助さんが見え、まだ十一歳の娘に本気の中段回し蹴りを繰り出す彼の足に着地し、牙突めいた一撃を見舞うしとりに私は驚愕してしまった。
「やふなぁ?」
「ん!刀を噛んじゃダメだよ!」
バチバチと電流を浴びても怯まない左之助さんに驚きもしないしとりに「やっぱり父娘なんだなあ」と思いながら、似蛭を抜いて斬りかかるも右手の人差し指と中指に刀身を挟み込まれ、二刀目の追撃は止まる。
「むう、父様やっぱり手加減してる!」
「当たり前だろ、しとりはまだガキだからな」
「わたし、もうけんちゃんとチューしたもん!」
「は?」
「あらあ……」
しとりの宣言に左之助さんのこめかみに青筋が浮かび上がり、私は十一歳という若さでそこまで進んでいるしとりと剣路君の二人に感心する。
左之助さんは上京したばかりの私を好いてくれていた訳ですから、あまり偉そうに言える立場じゃないのでモゴモゴと言い訳を考えていますね。
「しとり、そんなにあのガキが良いのか?」
「うん、けんちゃんは『オレは絶対にしとりに勝つ!だから夫婦になろう』って言ってくれたよ」
そう話してくれる、しとりは本当に綺麗でした。