「糸色君と出会って以降、とてもハチャメチャな日々を過ごしてきた。二度も心肺停止するし、本当に大変だったのだが?」
「あ、あはは、その節はありがとうございます」
しとりとひとえを無事にこの世に産むことが出来たのはドクトル・バタフライと、恵さん、みんなが私の事を按じて手伝ってくれ、命を繋いでくれたおかげです。
みんなのおかげで私は二十八まで生きてこれた。
怖いことも楽しいことも沢山経験して、本当に長く永く生きることが出来たと思います。沢山のお友達を作れて、親友もいる。苦楽を分かち合える関係を築けたのも嬉しくて幸せ者です。
「私としては、ホムンクルスになってほしいけどね」
「お断りします。私は人間で居たいんです。ホムンクルスになってしまえば、私という個は消える。妖怪に転じるほど人を憎めず、異形ほ死体に成り果てる勇気だって持ち合わせていません」
「相変わらず、強情だな」
「強情ではなく危惧です。不死身や不老の肉体に変わるという事は『前世の記憶の保持』は本領発揮し、私の脳機能を全て侵食する可能性もあり得るんです」
そう私は予測できる可能性を提示していく。
どの世界線の私も死ぬときは絶対に死ぬ筈です。どんなに恐ろしく怖くても『物語を繋げる能力』を知れば絶対に私は死ぬことを選びます。
これは、善悪の問題ではありません。
「私自身の暴走を止めるためです」
そう言って私はほうじ茶を飲み、喉を潤す。
「君の暴走?」
「はい。昔は秘密にしたいことをよく口走ることもありましたけど。アレは『前世の記憶の保持』に脳機能の大部分を占領されていたから、今はドクトルの拘束式を受けていますけど。人間としての私が死ねば解け、無尽蔵に世界を繋げることになります」
凍座白也の言っていた千里眼を持つ手の目という私の姿は間違いではなくあり得る姿────。化け物の私は「物語」を無尽蔵に繋げる。
モヂカラの力もそうです。
人物を描けば呼び出し、頼める。
「私は独りだけで数万回と怪人もヒーローも描き続けることが出来る。そして、その絵は本物に限りなく近い偽物でもあります」
「初めて、教えてくれたな」
「えぇ、もう先はありませんので。ドクトル・バタフライなら私の意図を汲んでくれますし、なにより誰かを傷つける事を私にさせないでください」
もはや日清戦争に機巧軍を送り込んでしまった私が言える事ではありませんけど。それでも誰かを傷つけるということだけはしたくない。
せめて、子供に誇れる母親で居たい。