「糸色殿と出会って十数年の間。いい加減にお主の隠し事の一つでも聞いてみたいものでござる」
「……例えば、なんですか?」
「そうでござるな。どうして、拙者の過去を知っていたのか。縁や志々雄の様な者に狙われやすい立場なのかも聞いてみたい」
そう言うと緋村剣心は歩を進める。
私の動揺を誘っているのでしょうが、そう簡単に私は動揺しません。家族の事になると怖いこともありますが、そちらとこちらは別々です。
「しかし、お主の隠し事を聞き出せるほど拙者たちは仲良くしていた訳ではござらん。あくまで、妻の親友、拙者の親友の妻。どこまでも一つ挟まねばならなんだ」
「…えぇ、単なるお互いを怖がって警戒していただけですけど。私は緋村剣心という個人の事は信頼しています。だからこそ核鉄を渡しました」
「嗚呼、ついぞ使わぬままでござったが。この道具のおかげで傷付いていた拙者の身体は順調に回復し、志々雄との決戦後も縁との戦いの後も無事に過ごせた」
ゆっくりと緋村剣心は核鉄を取り出す。
「お返しするでござるよ、糸色殿」
「え?」
「日に日に血色が悪くなるお主を見続けるのは辛い。なにより薫殿の親友を見捨てるなど拙者には出来ぬ。だから、この石はお主に返す」
「…………いきなり顔色の悪さを言われた事に少しばかり言いたいことはありますけど。貴方の気持ちは理解しました。ありがとうございます」
緋村剣心の核鉄を受け取って、胸元に仕舞う。
二つの核鉄。私の身体を維持する道具は幾つかありますが、流石に核鉄を増やして身体に埋め込むなんてことは私には不可能ですね。
どこかにいるドクトル・バタフライは「フエルミラー」を使って、こっそりと核鉄を量産していましたけど。あの人は本当にやることなすことが大変です。
「さあ、続きを」
「桂馬を貰って、王手です」
「ぬうぅぅ…!」
「私の駒、減らしてしますか?」
「まだでござる」
緋村剣心は考え込み、必死に作戦を考えている。
幕末最強の人斬り抜刀斎の顔付きに変わったら負けようかと思いつつ、真剣みを帯び始めた緋村剣心に少し苦笑いを向けてしまう。
べつに悪いことではなありませんけど。
やっぱり、怖いものは怖いものですし。
正直に言うとあまり考えたくないものもあります。緋村剣心の人斬り抜刀斎モードには一番関わりたくありませんし。怖いものは怖いのです。
その事を言うと左之助さんも悲しみますから流石に黙る。こわい、うん、すごく怖いからあまり刺激しないようにしています。