緋村剣心と将棋を指して数日。
左之助さんに彼と将棋をしていたことがバレて、ものすごく不満と不服と不悉を与えてしまったらしく、首筋に何度も噛み付かれてしまいました。
首へのキスは執着。
その事を知らないと思うんですが、左之助さんは無自覚に私への執着心を伝えています。好きですけど、好きだからこそもっと優しくしてほしい。
痛いのは苦手なんです。
「景」
「んッ…なんですか?」
モゾモゾと布団の中で肌着を探しても見つからず、仕方なく左之助さんの寝巻きの着流しを借りて、羽織るも裾を引きずって眼鏡を探す私の頭に撫でてきた左之助さんに驚く。
ぼやける視界でも左之助さんは分かります。
「眼鏡ならここだぞ」
「ありがとうございます」
差し出された眼鏡を受けとり、眼鏡を掛けるとニヤニヤと楽しげに笑っている左之助さんの顔がハッキリと見えて、着流しの襟元を押さえて、裾も整える。
「すけべ、はれんち、おばか」
「クク、酷い言い草だな」
「知りません、おばか」
そう言って私は布団を出る。
「壁かけハウス」の中は洋式ばかりですが、私の部屋にあるモノは和式です。数年は洋式で過ごしましたけど。やはり、和式に落ち着きましたよね。
「…………お尻触らないで下さい」
「触ってねえ、お前が踏んでるんだ」
さっきから変なイタズラばかりです。
左之助さんの態度に少し怪しさを抱きつつ、お風呂を沸かすために浴室に向かう。ショドウフォンを取り出して、『氵』に『易』を重ねて『湯』に変化させ、湯船にお湯を溜める。
モヂカラは本当に日々の生活に役立ちます。
「……あの、何でついてくるんですか?」
「ん?」
「いえ、左之助さんです?」
「風呂だろ?」
そうですけど。
まさか、一緒に入るつもりなの?と戸惑う私を無視して、のっそりと歩き出した左之助さんに苦笑を浮かべつつ、私も着いていきます。
お風呂はひとりのほうが楽なんですけど。
左之助さんには関係ないのでしょうね。
「ちゃんと身体を洗いましょうね?」
「わぁーってらぁ」
いつもの眼鏡を外して、防水仕様の眼鏡に変える。洗髪料はいくらでも良いものを作れますが、この外跳ねの癖毛は中々に治りません。
やっぱり、そういう仕組みなのかしら?
「んッ…」
「噛んだとこ滲みるか?」
「滲みますよっ」
首だけじゃない肩も手も足も色々なところを噛んだ癖に左之助さんは平然としている。ずるいです、卑怯です、私ばかり負けている気がします。
「さっさと湯船に浸かろうぜ」
「私が入れたんですけど……」
「そうだなあ……」
むう、なんだかなあ?