「おろ。左之、どうしたでござる?」
「景とこっそり将棋を指してたらしいな?」
「用事を思い出したでござる」
「怒ってねえよ。お前に下心ねえのは知ってる」
「そ、そうでござるよ」
「だが、留守中に来た理由は言えや」
「拙者、やっぱり急用が!」
「逃げんな!!」
ドタバタと緋村剣心と左之助さんは楽しそうにとびっくら……コホン、追い掛けっこをしています。神速は衰えず、未だに無事で何よりです。
「あまり走るとぎっくり腰になりますよ」
「そうよ。子供見てるんだから」
「ん!けんちゃん、ひーちゃん、行こ!」
「ん、わかった」
「あい!」
薫さんの言葉にふたりは振り返るも、子供達にとって父親達の追い掛けっこは興味を惹くものではなかったようですね。三人で剣玉をしている。
「もしもしかめよ、かめさんよ」
カンコンカンコンと剣玉の皿(左右の突起、柄頭)を使って、軽やかに動かすしとりの事を見つめる。私が口ずさんでいた歌を覚えてしまったせいなのですが。
1901年(明治34年)に誕生する「ウサギとカメ」の歌を口ずさむしとりを真剣に見つめる剣路君の眼差しに気付いたしとりは、にっこりと笑みを向ける。
可愛いです、ソーキュートです。
よしよしと撫でてあげたい。
その気持ちを我慢しながら鈴のように綺麗なしとりの声を聞いていると、左之助さんも緋村剣心も追い掛けっこをやめて、彼女の歌声に耳を傾ける。
「あっ……むう」
コロリと歌の途中で玉が溢れてしまい、しとりは残念そうにしながら剣路君に剣玉を差し出し、カンコンカンコンとしとりと同じ速度で玉を動かす。
「けんちゃん、お歌さんは?」
「ひとえ、まだうたえなぁぁ……ひとえがやって」
「あい!もしもしかめよ、かめさんよ」
カン、コン、カン、コン、と、ひとえは二人にくらべてまだ小さいから剣玉の使い方は緩やかですが、とても楽しそうに剣玉を揺らし、コロコロと声が弾む。
しとりの綺麗な声のはまた違った元気の出る歌声に私は目を瞑り、メトロノームのように一定のリズムも保っている剣玉の打つ音を聞く。
「つぎね、かーさま!」
「私ですか?」
「あい!」
ニコニコと笑って剣玉を差し出すひとえに少しビックリしながら、カン、コン、カン、コン、と一定のリズムを刻みつつ、私も同じように剣玉を組み換える。
こういう昔遊びは楽しい。
まだ、最新になるのでしょうか?
「景も出来るのか」
そんなに期待されても出来ることは限られているから、少しずつ試してみましょうね。