翌日の昼過ぎに私と左之助さんは右喜さんと央太君の案内で実父・東谷上下ェ門の暮らす畑沿いの一軒家に入った瞬間、左之助さんが真後ろに吹っ飛んだ。
「帰って来るなりオレは結婚しただァ?せめて祝言には呼びやがれ馬鹿野郎が!!」
「やむにやまれぬ事情があったんだよ!?」
いきなり殴り合いの喧嘩を始めてしまった二人に右喜さんは溜め息を吐きながら、切実に訴えるように私に「左之助兄ちゃんがあんなのでも捨てないでね?」と両手を握り締めて言ってきた。
むしろ離すつもりはないですね。
「必殺ッ!親父の竜巻投げ!!」
「しゃらくせぇ!」
「なんのっ!!」
東谷上下ェ門は一本背負いとジャイアントスイングを同時に行った様な独特の投げ技で左之助さんを宙に放り投げる。───が、左之助さんは空中で身体を捩り、飛び後ろ蹴りを繰り出した。
しかし、その蹴りを東谷上下ェ門は片手で受け止め、左之助さんの足を掴んで地面に叩き付ける。二人とも本気で戦っているけど。
何だか楽しそうに見える。
「うぉらっ!」
「こなくそ!」
……た、楽しそうに……では、うん?
「本気の殴り合いね、まったく」
「ど、どうしましょうか?」
「ほっとけば良いんですよ。それより私は景さんと左之助兄ちゃんとの馴れ初めが聞きたい!」
ワクワクとした表情で私を見つめる右喜さんに戸惑いと恥ずかしさを感じながら、チラリと央太君を見ればキラキラと激しく壮絶な喧嘩している左之助さんと東谷上下ェ門を見つめている。
やっぱり左之助さんの家族ですね。
「必殺ッ!!」
ポンッ……!
「あづうぅッ!!?」
「親父の熱き魂!」
また同じ技かと警戒した左之助さんは煙管から吹き出してきた火種を鼻先に受け、両手で鼻を押さえるように蹲った瞬間、強烈な頭突きが東谷上下ェ門の顎を捉えた。
「テメェ、親に本気で頭突きしやがったな!?」
「うるせぇ!煙管の火種なんざ吹かしやがって火傷したじゃねえか!?」
「ああ、もう!いい加減にしろ!」
まだまだ喧嘩を続けようとしていた二人を右喜さんは一喝し、喧嘩も終わるかと思ったけれど。ふたりは喧嘩を止めるどころか更に楽しそうに笑って殴り合う。
「これも一種の親子の会話なんですね」
「えぇ?」
「私達も二人の喧嘩が終わるまでお話ししましょう。左之助さんとの馴れ初めでしたよね?」
「うん!」
私は右喜さんと一緒に玄関先に腰掛けて、左之助さんと東谷上下ェ門の二人の姿が見えるところで、ゆっくりと今まで体験・経験してきた話を伝える。
ただ、どうしても私が左之助さんの事を話すと「るろうに剣心」ではなく「喧嘩屋の斬左」が主役の物語に近くなってしまう。
まあ、当然とは言えるけど。
アンケートの二択のまさかの接戦に驚きますね。
どちらの結果でもみんなが楽しめるように頑張ります。