シャッキー・チェン襲来から四日後。彼は帰ってこず、ひとえは約束を忘れられたと思い、プンプンと可愛らしく怒ってばかりです。
「(白の顔料、どうしてこう…)」
外来品の顔料を手に取って観察する。
『料理のスキル』によって品質を見極める事は可能のため、他の画家より良質の物を選べます。
ただ、そうすると色合いも派手なものに偏るため、品質ほ悪いものも数点ほど選び、混ぜ合わせ、私の筆に合わせる必要もあり、中々に難しい。
「Waouh, il y a vraiment beaucoup de monde」
「Excusez-moi, professeur」
「(フランス語?)」
カツカツと気品を纏って歩くお婆さんの後ろを着いて歩く少年の二人の髪の毛の色は────。
「しろがね色?」
ポツリと呟いた瞬間、お婆さんの視線が此方に向く。知っている、私はこのお婆さんの事を覚えているし、ずっと昔から知っている。
ルシール・ベルヌイユ
ギィ・クリストフ・レッシュ
どうして、この二人がここに?と困惑しながらも顔料の選別に戻り、良いものを手に取っていると手元に人影が出来る。他のお客さんでしょうか?
「Puis-je vous poser une question, mademoiselle ?」
「ひえっ」
ギィ・クリストフ・レッシュの突然の言葉に驚きつつ、何を入っているのかは大体予想は出来ますけど。流石にフランス語を聞き続けるのは辛い。
「包装済みほんやくコンニャク、どうぞです」
私の差し出すキャンディサイズの「ほんやくコンニャク」に首を傾げる彼に食べるジェスチャーを見せるとすぐに理解してくれ。
「さあ、食べたぞ。話を聞かせてくれ」
「はい。お聞きします」
「? 僕の言葉が分かるのか?」
「いえ、貴方は日本語を喋っていますよ」
「???」
困惑するギィ・クリストフ・レッシュの横を抜け、ほんやくコンニャクを手に取ったルシール・ベルヌイユも同じように咀嚼し、飲み込んだ。
「まあまあだね。練りが甘い」
「先生、僕は日本語を話しているそうです」
「私も話しているよ。おそらく、この眼鏡の子供のくれた柔らかいキャンディのせいだろう。ギィ、手荒な真似はせず、普通に話しておやり」
「すみません。お嬢さん、僕と彼女の事を見ながら『しろがね』と呟いていたね。その理由を聞いて……っと、いきなり誰だ?」
「ソイツの旦那だ。ギンバエが」
私の手を握っているギィ・クリストフ・レッシュの右手を無造作に蹴り上げ、睨み付ける背広姿の左之助さんにトキメキを感じています。
でも、ギンバエはだめです。