ルシール・ベルヌイユとギィ・クリストフ・レッシュは東京を出立し、才賀貞義の待つ屋敷へと向かって行ってしまった。止めるべきだったのかを悩みつつも私は絵を描き続けています。
不安を誤魔化す事はせず、焦りと恐怖を込める。坂巻泥努のように圧倒的な精神性を持っていない私に出来るのは未来の技術を詰め込み、作り上げること。
「……うん。良い感じです」
しとりとひとえの絵。
いつも、ずっと、大切に見守っているから二人の笑顔は目を瞑っていても描けます。まあ、瞼越しにキャンバスがうっすらと見えるせいですけど。
如雨露を持って花壇に水をあげるひとえの傍にしゃがみ、同じように花壇を見つめるしとりは雑草を抜いて、ひとえも一緒に雑草取りをしています。
姉妹仲は本当に良好で嬉しいです。
姿お兄様は優しく強く頼りになりますが、どうにもシスターコンプレックス。いわゆるシスコンの塊だと、みんなは言ってくる。
普通の距離感だと思うんだけどなあ。
「…んッ…左之助さん、どうしたんですか?」
「いや、無性に噛みたくなった」
そう言って私の首筋に噛みつく左之助さんに抗議すると、ただの気分で噛みついたように話す彼に少しだけ苦笑を浮かべつつ、彼の頭を優しく撫でてあげる。
しろがねと出会って、また未来のために残すことが出来たと思う。わたしは左之助さんや緋村剣心達と違って、戦って何かを残したりすることは出来ない。
もっとも、残しても散財する子供は生まれるかも知れません。その時はその時ですけど。未来の子供達を信じて、私は絵を描くだけです。
「景はいつも甘くて美味そうな匂いがするからな。ずっとこうしてても飽きねえよ」
「私は、人体に何かを引き起こすフェロモンなんて出せませんよ?」
「ふぇろ?なんだそれ」
「匂いのことです」
「ふぇろもん、ねえ?」
ゆっくりとチョーカーの金具を外し、噛み傷の残っている首を掴み、自分勝手に顔の向きを変えさせ、噛みついて、首の肉を圧し、歯形を刻み付ける。
血を流せば舌先で掬われ、何とも言えない恥ずかしさに左之助さんの腕をペチペチと叩きつつ、そういうことは止めるようにと注意を続けます。
女の子に……いえ、女の人にそういうことをするのは良くないです。しとりやひとえが真似したら、どうするんですか?責任は取ってくれる男の子はいますけど、あまり無茶を要求するのはダメです。
しとりは我慢できるでしょうが、ひとえは気が付いたらしていそうなので、かなり気になってしまいます。