「糸色君、新しい設計図が欲しいのだが」
「……またですか?」
ひとえのお世話する花壇に生えた謎の動く花を娘達と一緒に眺めていると、いつの間にか背後に立っていたドクトル・バタフライにそう言われました。
別段、作るのは良いんです。
著者の名前を「糸色景」にするのは止めて下さい。このままだと設計図を記した大百科が、本当に奇天烈斎の描いたもののように扱われます。
「今回は何を作るんですか?」
「嗚呼、ちょっとした実験のために『創世キット』を作りたいのだが良いだろうか」
「良いわけないでしょう。おバカなんですか」
ドクトル・バタフライの頼んできた「創世キット」は有り体に言えば新しい世界を作り出せるひみつ道具。しかも自分自身は神様として世界を見守ることができ、助言や助力も出来る上、自由に世界を破棄できる。
倫理観と生命への冒涜です。
「かーさま、かみさまなるの?」
「いいえ、成りません。神様に成ってしまったら、私は糸色でも相楽でも無くなってしまいますし、貴女達のお母さんをやめることになってしまいます」
そんなことは絶対にイヤです。
怖いひみつ道具は作りたくないんですが、ドクトル・バタフライは私を虐めているのでしょうか?なんてことを思いつつ、一体、「創世キット」を使って何を作ろうとしているのかを問いかける。
「鏡面世界は戦隊の彼らが使うからね。自由な実験を出来る場所が見つからないんだ。私の発明品を試す実験室として使う。人や生き物は創造しないよ」
私の顔を見て言ってくれれば信用出来るんですけど。ドクトル・バタフライは、わざと私の事を見て確かめているのでしょうか。
────とは言えです。
「分かりました。信じます」
「そうか。良かったよ」
「ただし、悪いことはダメですよ!」
そう言うと彼はキョトンとした表情を浮かべ、クツクツと笑い出す。なにが琴線に触れたのかは分かりませんが、人を笑うのは酷いです。
「ん!わたしも行ってみたい!」
「ふむ、しとり君がいくら強くても連れていくことは無理だ。君は宇宙空間で動いたり活動したりする事は出来ないだろう?」
「うちゅー?」
「あー、天動説と地動説の話ですね。前回、間違えて教えてしまいましたから……」
どうにも緊張で変なことを言っていた気がします。いえ、実際に変なことを言っていたのは言っていましたね。もっとも危険な事は言っていたはずです。
下手に広まると危険な気もしますし。
「母様、わたしもうちゅーいく」