「景、なんだこれ?」
「……釣り堀?」
「なんで庭に釣り堀が出来るんだよ」
左之助さんは困惑しながらも釣り糸を垂らして魚のヒットを待つしとりとひとえの背後に回り込み、釣り堀の中を覗き込んだ瞬間、あからさまに釣り堀とは思えない海水の中に眉間を摘まんだ。
「鯛が見えたような」
「ん!釣ったよ、鯛!」
「そうか。まあ、景の作るやつだからなあ」
そんなことを呟きながら左之助さんは椅子代わりに用意しておいた木箱に座り、しとりとひとえと一緒に釣りを始めました。
生け簀は折神もいますが、共生は出来ます。舵木折神は海で野生化してましたから、自然と他の生きた魚とも馴染んで貰える筈です。
まあ、かなり危ない気もしますけど。
「かーさま、つれないね」
「そうですねえ……何故でしょう?」
しとりとひとえの竿にはヒットするのに、私の竿には一匹も魚はヒットしません。やっぱり私は動物に嫌われているんでしょうか。
「父様、潜っていい?」
「ダメだ」
「ん!なんで!んー!ん!ん!」
「イテテテッ。溺れたら危ないだろうが」
「わたしは溺れないよ?」
それだと私が溺れるみたいに聞こえますね。
まあ、実際に溺れますけど。泳げないわけではないんですが、すごく酔いやすいだけで、本当に泳げないわけではないんですよ?
……すみません。見栄です、泳げないです。
「しとり、泳ぐには水着というものが必要なんです。それにしとりは可愛い女の子は無闇に素肌を晒してはいけませんよ?」
「そうなの?」
「そうなんです。良いですか、見せて良いのは好きな人だけです。左之助さんはお父さんですが、男の人なので今はもうダメですけど」
「道理で、一緒に風呂に入ってくれねえわけだ。お前の仕業だったのか、景」
「もう十一歳なんですよ?一人でお風呂に入るのは当たり前です、無頓着になってしまったら、しとりが危ないんですから!」
そう言って不満げな左之助さんに言葉を掛けていると、何かを思い付いたように笑顔を浮かべ、左之助さんは私の方を向いた。
「なら、景と風呂に入れば良いな」
この人は、何を言っているのでしょうか。
あまりにも謎めいた解答に困惑する私の竿に、ようやくヒットしたかと思えば「落とし物つりぼり」から、鮫の頭を持つ獣拳の拳聖シャッキー・チェンが舞い上がり、ズシン!と地面に着地した。
「シャッキーン!!オレ、もう一回来たよ!」
「しゃきーん!!サメさん、来たよ!かーさま!」
ひとえは、とても喜んでいます。
フフ、大物を釣り上げてしまったようですね。