斎藤一の訪問から2日後。
我が家の大黒柱に時代樹様の精霊が再び顕現し、お供え物のお団子と緑茶を飲み、帰りました。わりと俗世に染まってきましたね。
個人的に胡麻団子を所望する様です。
私も大好きです、美味しいですよね。
そう思いながら私は時代樹様に苦言を言われつつ、機巧人形の整備を続けています。ですが、これはしとりとひとえのためです。
たまに護国強兵や祖国繁栄のためだという命令を受けることはありますが、女の私の作ったものに守られる事を拒む人はかなり多い。
明治時代はまだまだ男尊女卑の影響も大きく才能や能力を持っていたとしても、そう易々と登ることの出来ない壁は実在している。
左之助さんや緋村剣心、斎藤一、阿部十郎のように強くて優しい愛妻家も居ますけど。そちらはかなりの少数派。マイノリティー過ぎるかもですね。
「景、また考え事か?」
「少し、だけですよ?」
「本当か?また鼻血出さねえよな?」
「出しませんよ」
そう言って私は左之助さんに握られた手を握り返しつつ、未だに怪しんでくる彼のおでこをペチンと軽く叩いて、「そんなに心配しなくてももう大丈夫です」と告げ、ゆっくりと彼の顔を見つめる。
彼とは、もう十三年の関係です。
いつも守ってくれて、いつも助けてくれて、いつも勇気を、笑顔を、愛を、沢山のものを私に与えてくれた。しとりとひとえにも会わせてくれた。
甲乙を付ける必要なく、すごく幸せです。
「左之助さん、私はとても幸せです」
「……嗚呼、オレも幸せだよ」
「もしも生まれ変わりがあるのなら、また私の事を見つけてくれますか?」
「見つける。何度だって、何十回だって、オレは絶対にお前の事を探し出し、絶対にお前の事を好きになる。だから、待っててくれるか」
「フフ、待ちますよ、ずうっと待ちます」
私と左之助さんだけの約束です。
ゆっくりと私のお膝の上に頭を乗せて寝転ぶ左之助さんの頭を撫でる。少しだけ色素の抜けた白髪の生えた髪の毛、真っ白になった頭も見たかったなあ……。
そんなことを考えて、私は眼鏡を外す。見えすぎると泣いてしまいそうだから、ですね。
「眼鏡、外して良いのか?」
「大丈夫です。左之助さんが一番傍に居てくれますから見えなくても怖くないです」
私の事をずっと守ってくれた貴方が傍に居てくれる。それだけで幸せですし、貴方と触れ合えるのに目を酷使する必要はありませんからね。
「ねえ、左之助さん」
「なんだ?」
「好き、大好き、愛しています」
「オレも大好きで愛しているよ」
フフ、お揃いですね。