「かーさま、かーさま」
「何ですか。ひとえ?」
「ダンゴムシ」
「え?」
私の袖をくいくいと引っ張るひとえの方を向けば、彼女は縁側の方を指差し、障子越しに見える丸い何かが通り抜ける光景を見つめてしまう。
すごく怖いものを見た気がします。
しとり……いえ、あの子も虫は苦手ですね。それにしてもすごく大きな影が動いていましたけど。今のは何だったんでしょうか?
「なに睨んでんだこの生首がァ!!」
左之助さんの怒声が聞こえたかと思えば障子向こうで戻ってきたダンゴムシはボコボコに殴られ、だんだんと萎んでいき、最後は見えなくなりました。
「ったく。妖怪屋敷じゃねえぞ」
「とーさま、ダンゴムシはー?」
「だ、だんごむし?」
トタトタと駆け寄って左之助さんに抱きついたひとえは不思議そうに小首を傾げ、縁側の廊下を見るも何も見つからなかったようです。
しょんぼりする、ひとえも可愛いですね♪︎
「とーさま、だっこ」
「あー、まて。今手が汚い」
「だっこ!」
「ん!ひーちゃん、抱っこしてあげる!」
「ねーさま!」
ひしっと抱き合った二人はぷにぷにでモチモチとした頬っぺたをくっつけて、嬉しそうに楽しそうに抱っこして抱っこされている。
ふたりはすっかり大きくなってしまいましたから、お母さんは抱っこするにしても座っているときにお膝の上に乗せてあげることしか出来ません。
「……疎外感ですね。私も混ぜて欲しいです」
「ん!母様、ぎゅうする!」
「ひーもギューする!」
「え、あ、おもああぁぁぁ…………」
私の方にやって来た二人を受け止めきれず、そのまま倒れてしまう。座っていたから良かったですけど、立っていたら背骨が折れていましたね。
「くっ。手ぇ洗うから待っとけ」
「やっ!とーさま、だっこしてくれなかったもん!」
「いや、だからな?」
「いじわるしたもん!」
「……景、どうしたらいい?」
「とりあえず、手を洗ってから抱っこしてあげてほしいです。ひとえもそれなら良いでしょう?」
そう私は胸に顔を押し付けるように、引っ付き虫になっている可愛い可愛い私の愛娘達の頭を撫でながら、そう伝えると左之助さんは少し駆け足で台所に向かう。
「ん。母様、影に行こう!」
「え?あぷっ」
「こまちゃん、会えるね!」
ずるずると影の中に沈んでいく身体に驚きつつ、しとりとひとえの笑顔に止めることをやめ、私は影の中に沈んでいき、呆れ顔の個魔の方に出迎えて貰いました。
「嬢ちゃん、支えるの間に合わなかったら危ないって言ってたわよね?」
「ん、問題なかった」