志葉様によって「ヒヒシンケンオー」に決まった二体目のシンケンオー。猛狒真剣王。漢字に書き直せばこうなるわけですけど。
未来に誕生する烏賊折神の使い手と未来の殿様である志葉丈留と再会するまで、ヒヒシンケンオーの復活は先送りになってしまうかも知れませんね。
「糸色、会いに来たぞ!」
「帰れ」
「さ、左之助さん、流石にいきなりすぎますよ」
爽やかな笑顔を浮かべた志葉誠輔は鏡面世界を通って我が家の───私がお母様に頂いた化粧台の鏡を通って入って来ました。
『火』のモヂカラを持つ性質上、私と娘達の発する特定の周波数を感知し、最適化した道を通ってきたというのは理解できるんですけど。
些か訪問のタイミングに不満はあります。
ゆっくりと着物を着て、帯を軽く締める眠るときは浴衣にしているおかげで着替えは楽ですが、こうも唐突に来るのは予想外すぎてイヤになりそうです。
イヤに、なりそうですっ。
「で、何のようだ?」
「うむ、実は谷に婚姻を申し込むべきか悩んでいてな。いつも糸色の事を話しているから、相談するなら本人に聞くべきだと思ったわけだ」
「好きと言えば良いじゃないですか」
「むっ、うむうぅ……」
「チッ。男だろ、言ってやれよ」
左之助さんは志葉様の肩を掴み、鏡に向かって投げ飛ばすと鏡に布を被せて通り道を消してしまった。
「はあ、あの馬鹿殿が」
「あ、あはは、すみません」
「お前が謝ることじゃねえだろ。それより背中向けろ、まだ按摩の途中だったろう?」
「い、痛いので今日はもう良いかなあ……なんて」
「毎日、短くても良いからしろって恵に言われたのを忘れたのか?浴衣脱いで、寝転んどけ」
「うぅ、痛いのは嫌いなのにっ」
背中に添う大きな手の加圧に肺の中に溜まっていた空気を吐いて、ゆっくりと痛みと気持ち良さに枕を抱き締める腕と指の力が増していく。
「少し首に触るぞ?」
───コキッ、と音が聴こえた。
「
左之助さんは海老反りになるように腰に手のひらを当てて、顎下に手を通して私の身体を持ち上げる。背骨の歪みを矯正して呼吸の気道を拡げるという話ですけど、これは絶対にデマです……!
腰と首が、すごく痛すぎます!!
「へし折れそうだな……」
「まひぎぃっ……!?」
コキコキと背骨が逆向きに曲がり、折れるんじゃないかという不安で涙目になる私の顔を楽しそうに見つめる左之助さんはやっぱり意地悪だとおもいます。
「えほっ、けほっ、けほっ!」
「大丈夫か?」
「いじわるっ」
「してない」
「しましたっ。あとお尻触りましたね!」
「尻は触った」