「しとり様、しとり様」
「むえぅ…ん…」
モゾモゾと私の布団を抜け出して動くしとりに釣られて、私も目を覚まし、最近手慣れ始めた暗がりでの眼鏡探しを終え、左之助さんとひとえに『眠』のモヂカラを与えて、うつらうつらと夢にまた船を漕ぎ出そうとするしとりの事を支えてあげる。
「御母堂様も夜分に申し訳ありませぬ」
「私は大丈夫ですが、しとりはまだ子供ですから出来ればお昼か朝方に訪ねて来るように宣伝して貰えると助かります」
「その様にお伝え致しまする」
「はい。お願いしますね。しとり、またお友達が来てくれましたから」
「ん、ん、おなまえ、かいてぇね」
「フフフ、やはり童は愛いもので」
その呟きに私は同意しながらサザエの貝殻に乗った女性は名を記すと消えた。奉加帳と命名して一週間が過ぎて、もう四十七体の妖怪がしとりに名前を預けた。
それだけしとりが慕われて信頼を得ていると知ることが出来るのは嬉しいのですが、火属性の妖怪は私に向かって拝み、祈りを捧げるのは身体の中に納めた『地獄の鍵』によるものなのでしょうね。
「しとり、お疲れ様です」
「くぁむ…ねむぃ…」
「フフ、ゆっくり寝ましょうね?」
フラフラと布団に戻ってきたしとりに布団を掛けてあげ、ポンポンと優しく彼女のお腹を叩いて、眠りやすいリズムを作ってあげる。
「……かぁさまは、ねむい?」
「お母さんは平気ですよぉ」
眠らないなんて事は多々ありますし。みんなにモヂカラを使って安眠を与えつつ、一人だけ咳き込んでいたり、気づかれないように着替えたりしていますからね。
まあ、内緒にしていますけど。
「んむ………えふ…」
ゆっくりと眠り始めたしとりの可愛い寝顔を見つめて、行灯の火を吹き消す。しとりもひとえも大きく健やかに私の病気が遺伝せず、大きくなってください。
「百鬼夜行の主、しとり」
クスクスと笑ってしまう。
人間の率いる百鬼夜行。
欲深く諦めの悪い人間の率いる妖怪達もまた足掻き続けることが大好きなのでしょうね。しとりは妖怪に対する信頼関係は強固であり、とても良いことです。
しかし、本当に悩ましいのは私のモヂカラの結界が薄れているということです。一月か二月、それぐらいの頻度ですが重ねていた結界は薄まっている。
「(心臓が持たないから、身体がモヂカラを使うことを無意識に拒否しているのでしょうね)」
本当に、どこまでも浅ましく生きようとしている。生きたいけれど、もう覚悟は決まっています。私が、居なくても世界は拡がり続けるようですからね。