「糸色君、少し良いかね?」
「けほっ、今日もいきなりですね」
肌寒さと冷たい空気に咳き込む私の目の前に、ぬるりと現れたドクトル・バタフライにそう言いながら、私は落ち葉を掃き、集める手を止めます。
薩摩芋を貰ったので焼き芋にしようとしていたタイミングでやって来たということはドクトル・バタフライも焼き芋を食べたかったんですね。
「新しい薬を作ってきたんだ。強心作用のある、君の停止した心臓を無理やり起こした薬を改良し、心臓に負担を掛けない程度に鼓動を強める」
「あの、悪いお薬の名前が羅列してますよ?」
「そこはご愛嬌というものさ」
「おバカになっちゃうのでダメです」
「……糸色君、生きることを諦めていないかね?あまり友人に酷いことを言いたくないのだが、生きる気力が無いなら薬など飲まず、あの神酒も飲むのはやめたほうがいいと私は思うのだが」
いきなり、そう言ってきたドクトル・バタフライの少し刺々しい言葉に苦笑を浮かべる。────ですが、生きることを諦めているというのは、強ちウソと言うわけではありません。
私の身体に在る『物語を繋げる能力』を延命のために楯敷君に渡してしまえば、待ち受けているのは世界の均衡の崩れ去った。
この世の終わりです。
それを防ぐには私の死は最適解……なんです。
「それに、死にたくないからと楯敷君にこの能力を差し出してしまったら、今まで私の事を守ってくれた、みんなに申し訳ありませんから」
そう言って私は笑顔を彼に向ける。
「私達のように抗うと?君は身体も弱くまともに戦うことも出来ないか弱い生き物だ。私達からすれば赤子のように存在するだけで、無垢な存在に等しい」
「無垢では、ないですねえ」
「まあ、カマトトではあるな。君の知識ならソッチ方面も玄人以上に精通しているだろう」
「っ、げ、下世話な話しは嫌いです」
そういう話しは苦手だから避けているんです。ま、まあ、昔はお金を稼ぐために左之助さんを勝手にモデルにしていましたけど。
今は普通に漫画を描いています。
「……■■■君、君は後悔はないのかね?理不尽だと怒っていいはずだ、君だけにその力を押し付け、並行世界に至るまで、どうしてなんだ?」
「前世の名前ですねえ……でも、本当に、なんででしょうね。神様が私の事を選んでくれた理由は分かります。私が、一番弱くて一番人の事を求めてしまうから」
他の人達は一人でも問題ないと突き進める。
けれど。私は一人では動けない。
ずっと照らしてくれる人が必要です。