最近、赤毛に十字傷の男を探す浪人の噂を八百屋さんで聞きました。緋村剣心を探しているのかと思えば、癖毛に眼鏡を掛けた女を探す浪人の噂を聞きました。
つまり、私と緋村剣心の事を探す集団。
私と緋村剣心の共通する点なんて存在しないと思うんですけど。
何かありましたっけ?と考えてもとくに思い浮かばず、私はお絵描きに勤しむひとえのスケッチブックとクレヨンで描かれるドンの事を見つめる。
「(緋村さんと私を狙う。あるいは、探す。思い浮かぶのは上海マフィア関連ですけど。浪人風……変装の可能性もありますね)」
そんな可能性を考えつつ、ひとえの後ろ髪を纏めるように手櫛を繰り返し、ゆっくりと整えてリボンを結んであげる。うん、可愛いです。
「?」
「フフ、可愛いですねえ♪︎」
私の方に振り向いたひとえの頭を優しく撫でてあげると擽ったそうに目を細めて笑い、ひとえはフンスと胸を張って私に書き終えた絵を見せてくれた。
「ドンと……なに?」
可愛らしく描かれたドンの真横。よくある、よく聞く、真っ黒なヒト型の存在に私は困惑してドンの真横を見るも何も見えず、困惑してしまう。
「ひとえ、これは?」
「かーさま!」
「………………私、黒いですか?」
「んーん、かーさまのそばにいるの」
「え?」
慌てて後ろや上を見るも見えず、私は見えない何かにビクビクと震えてしまうけれど。ひとえを守るために、ショドウフォンだけは握り締めます。
でも、来ないなら来ないでください。
来るなら来るときは三時間前に連絡を送り、出てくるときはスローモーションで私が逃げ切れる位置まで離れてから現れて、二秒で消えてほしいです。
怖いのは絶対に無理です…!
「ひとえ、お母さんの後ろにいますか?」
「あい!こまねーさまいる!」
「え?」
「おいおい。教えちゃダメでしょう?」
そう言うと私の影から出てきた個魔の方に、深く安堵の吐息をこぼして、ペチペチと彼女の手を握って叩いてお仕置きします。
「痛い痛い」
「個魔の方、お母さんは怖がりなんですよ?夕飯の唐揚げを一つ減らしますよ!」
「待って、それとこれとは話が違うぞ」
いいえ、同じです。
私が、怖いものが苦手なのを知っているのに悪戯したということはお仕置きを受ける覚悟があったのは分かっています。
「……反省しましたか?」
「うん、ごめん」
「よろしい。許してあげます、でももう怖いことはしないでくださいね?」
反省しているという個魔の方の頭を撫でてあげ、しっかりと反省しているようなので許します。