ゆっくりと朝日を浴びながら起床した私は襟元を正して窓を開け、宿場町の川沿いを見下ろす。昨晩、左之助さんに無謀な喧嘩を仕掛けた彼らは見事に返り討ちに遇い、ズタボロの姿で川沿いに並んで気絶している。
蛮竜、やっぱり本物だったけど。
元々は普通の超重量級の大鉾……昨日みたいに飛んで来るように現れるのは絶対に有り得ない事だけど。可能性を考えると思い当たる物は一つだけある。
「四魂の欠片もある…?」
それは考えすぎだと意識を切り替える。
蛮竜でさえ世界のパワーバランスを崩壊させる代物なのに、更に四魂の欠片も付属していると考えたら……左之助さんを狙う人が増える!?
す、捨てられないよね?と不安になりながら着替え終わり、グースカと眠っている左之助さんの事を見つめる。喧嘩しても傷を負うことが少なくなってくれるのは嬉しいけど。
左之助さんが大怪我を負ったらという不安を無くす手段は無く、むしろ人の困り事を助けに向かうとき、私は無事を祈ることしか出来ない。
「…あっ、枝毛見つけた……」
ワシャワシャと眠っている左之助さんの頭を膝に乗せて撫でていると枝毛を見つけた。こうして毎日左之助さんを見ていても絶対に飽きないのは愛しているから、なのかな?なんて思ってみたりする。
「……んっ…どうかしたのか?…」
「いいえ、何でもありませんよ。たまにお昼まで眠って良いんですよ」
「バカ、そうしたらお前と話せねえだろ」
「…ッッッ…」
こ、この人は本当にもう!
どうして、そんなカッコいいセリフを、胸の奥がドキドキしちゃうことを平然と言えるんですかね。ペチペチと彼の頭を照れ隠しで軽く叩く。
「イテテ……」
私の手なんて痛くもないのに擽ったそうに笑って私の手を受け止める左之助さんの優しさに寄り掛かってしまっていることを申し訳無く思うと同時に嬉しく思ってしまう私はイヤな女なのかも知れない。
「オイコラ、出歯亀共。覗き見は良くねえぞ」
いきなり、襖に向かって文句を言った瞬間、力任せに勢い良くスパァーンッ!と襖が開き、東谷上下ェ門と右喜さん、央太君が現れた。
「出歯亀じゃねえ!俺は息子夫婦のラブラブ度を見に来ただけだ!ついでに言やァ…昨晩の喧嘩騒動に呼ばなかったドラ息子に文句を言いに来た!!」
「わ、私は今後の参考に…」
「…ぼ、ぼくは兄ちゃに…」
三人三様の言葉を言い始めてしまい、左之助さんは「この後に景の実家にも行くってのに本気で不安になってきやがった」と頭を掻いて呆れる。
このまま普通に終わってくれたら良いんですけどね。蛮竜も来てくれたから……あれ?蛮竜が在るってことは帰りに左之助さんに助けて貰えないのでは?
くうっ、まさか武器に負けるなんて……!