上海マフィアの構成員は変装しているつもりなんだろうけど。磯や潮、独特の香料の香りを纏っているおかげで簡単に見分けることができます。
「あとシンプルに刺青彫ってますよね」
「見分けつきやすいわよね」
「なんで禿げばっかりなのかしら?」
そう薫さんと恵さんも同意してくれますし。髪の毛に関しては格差社会ですから剃って忠誠心を現していたりするわけですし。
好き好んで剃っているわけではないのでは?と呟きながら神谷道場の真ん中に集まり、そう井戸端会議的なものを私達はしています。
まあ、なぜか私達は遠巻きに見られたり拝まれたりと色々と大変な事もあるので、こうして集まる機会はあまりないのです。
「ところで、聞きたいことがあるんだけど」
「恵さんが私達にですか?」
「どちらかと言えば景さんにじゃない?」
「どっちもよ。さっきから気になっているんだけど、景さんの後ろに控えているのって御庭番衆の般若よね?なんで翁面を被ってるのよ」
そう恵さんは私の後ろで正座する般若を見据える。彼の近くにはひとえや心弥君*1がいます。
「……般若面は、若に泣かれるのだ」
「あの男から想像できない子供ね」
「でも、子供は泣くのが仕事ですから」
若君と呼ばれる四乃森蒼紫と操さんの息子は料亭「葵屋」の三代目を継ぐ予定だそうですが、無事に継げるのかも少しだけ心配になりますね。
二人の子供ですから可愛くて良い子なんですけど。
「糸色殿、折り入って頼み事があるのです。どうか新しい絵襖を描いて戴きたいのです!自分がいないと若は泣いておられるのです!!」
「絵襖……ああ、あれですね」
「はい。若のために頼みます」
「分かりました。左之助さんと日程を合わせて、京都へ行かせて貰いますね」
「有り難き幸せ…!」
そう言って私に頭を下げようとする般若を止めた瞬間、頬っぺたを摘ままれる。
「いふぁいれふっ、やえふえっ」
「危ないって自分で言ったわよね?しかも何なの?私達とそう変わらない癖に赤ちゃんみたいな頬っぺたして、羨ましいじゃないの」
「今度は何したのよ、教えてくれるわよね?」
「たふけへくらひゃいぃ……」
むにむにっと頬っぺたを揉みくちゃにされ、パタパタと手足を動かすも二人を押し退けるなんて出来ず、一方的に私は頬っぺたを触られ、蹂躙されてしまいます。
「女人の戯れ。私は失礼致します」
「かーさま、しんちゃんとあそんでくる!」
「あそぶー」
見捨てないでくださいっ、ひとえ?
ひとえさーん?
「白状しなさい」
「教えて?」
「ひ、ひぃんっ」