左之助さんのところにお弁当を届けるために道を歩いていると、路地から出てきた男の人とぶつかる寸前、彼は軽やかに私の身体を受け止め、ゆっくりと降ろしてくれました。
悠久山和尚の様な出で立ち。
恐ろしさを感じないけれど、強さを感じます。
「
「(これは、漢語?苦手なんですけど……えと、確か)
「
「はい。分かりますよ、お上手ですね」
「そうか」
私の事を見下ろす大きな男性を取り囲み、静かに陣形を取り始める御庭番衆の方々に般若は手形を変えて指示を送り、素早く彼の身体を縛ろうとした刹那、強烈な気迫と共に放たれた震脚は地響きを起こし、彼の身体に巻き付いた縄を引かれ、御庭番衆の方々は豪腕に衝突し、無造作に理不尽すぎる程容易く弾き飛ばされてしまった。
「───名は
「えと、私はもう婚姻を結んでいますので」
「糸色殿、おふざけしている場合ではない。早々に逃げて貰わねば我等も自由に動けぬ!」
「は、はい!」
踵を返して、慌てて私は逃げ出す。
後ろの方で殴り合う音、金属をぶつける音が響く最中、ドクンドクンと心臓の音が走る度に大きく不規則で歪に鳴り、酩酊したときよりも酷い吐き気と気持ち悪さに躓き、地面に座り込んでしまう。
けど、それ以上に呼吸するだけで胸が裂けるように痛みを訴える心臓と肺を押さえながら、ポタポタと地面に落ちる赤い水滴に、苦笑を浮かべてしまった。
「……お前、走るの遅すぎないか?」
「げほっ、ごほっ、わ、わがっでまずよ゛」
口許を押さえて蹲る私の背中を見下ろす呂虔の事を見上げた次の瞬間、私の目の前に燃え盛る炎が舞い上がり、呂虔の事を退ける。
「景ちゃんさん、大丈夫!?」
「社長の嫁に手出ししてんじゃねえぞ筋肉達磨!」
「景さん、僕に掴まって下さい。逃げますよ!」
私の事を担ぎ上げた井上君の成長に嬉しさを感じつつ、昔は私並みに貧弱だったのに数年の成長の速さに涙を流してしまいそうです。
「阿爛!そっちの路地に入って!明日郎は弐の秘剣を食らわせてやりなさい!!」
「おう!!吹っ飛べ、筋肉達磨ッ!!」
その掛け声と共に黒革の手袋が爆ぜる。
志々雄真実が無限刃を使い続け、編み出した固有剣技「紅蓮腕」を使った長谷川君に目を見開き、思わず志々雄真実の背中を幻視してしまった。