「焼けてねえ!?」
「景ちゃん、何なのあれ?!」
「さ、さあ?」
「「「知ってる顔!!」」」
三人の声は重なってゴミ箱や廃材を蹴って呂虔の足止めを行いつつ、左之助さんのいる場所へと走ってくれていたその時、ゆっくりと右手を後ろに向かって大きく開くように振り上げる呂虔の姿を見てしまった。
「礫が来ます!」
「旭、景さん、隠れてて!」
「あんにゃろう!切り落としてやる!」
「噴ッ!!」
強烈な震脚、繰り出す右腕。
練り上げた力を砲弾として放つ「飛ばす発勁」に慌てて『盾』のモヂカラを書くも粉々に粉砕され、緩やかに歩いて近付いて来る存在に、ようやく思い出す。
───────
大陸に存在する不破一族と酷似した殺戮の民。人を殺す事を生業とする最強の一族。百年後の未来で、史上最強の修羅王と対峙する運命を持つ一族。
「ぐっ、痛てェ…」
「ひ、ひえぇ……手から何か出てたわよ」
「噂に聞く気功ってやつだろうね」
「み、みんな、逃げて大丈夫です」
そう私は三人の身体に『逃』のモヂカラを書き込み、文句を言われる前に走り出した三人に一礼し、ゆっくりと深呼吸して後ろに振り向く。
呂虔。
曹操に仕えた武力と知略に長けた武将。強さも然ることながら知略に於いて、悪辣と言えるほど手加減無しの戦略や罠を多用したと記憶していますけど。
目の前に立つ呂虔は、知性ある筋肉家です。
「逃げなくていいのか?」
「はい。ここが、良いんです」
呂虔の問いかけに答えた瞬間、私の真横を大きな大鉾が突き抜け、呂虔は白刃取りの如くその刀身を掴んだ瞬間、青白い雷撃が迸る。
「景、無茶するなって言ったよなぁ?」
「む、無茶はしていません!」
「……お前ら、景を連れて離れとけ」
左之助さんに訂正を求めるもすでに私の事は見ておらず、左之助さんは蛮竜を押し退けて出てきた呂虔を見据え、両手の骨を鳴らす。
「左之助さん、その人は呂家の人間ですよ!?」
「知らん」
「不破一族の大陸版です!」
「尚更ブッ飛ばす」
なんで聞いてくれないの?と悲しくなる私を無視して向かい合った左之助さんと呂虔の拳が衝突し、お互いの身体を後ろに弾く。
いえ、それよりも左之助さんが競り負けた。
「うぉらっ!!」
「型も流れも無い拳だな」
左之助さんの右拳を手のひらで止める瞬間、力を流された左之助さんの身体が勢いを増し、地面に向かって脳天から叩き落とされた。
「暫く寝ていろ」
「阿爛、旭、社長の事頼むぞ」
「そっちこそ逃げる時間稼いでよね」
「アンタ達、前見なさい」
旭さんの言葉に呂虔も歩みを止める。
「クソが、二日酔い並みに痛てぇ」
「お前、不死身かよ」
「あァ?ウチは健康一番なんだよ、阿呆が」