東谷一家との楽しくもかなり大変な一週間の生活も終わってしまったけれど。同じ信州の県内に存在する私の実家へと向かうため、ちょうど良い機会だと左之助さんは言ってくれた。
大根畑の復興を手伝おうとしたら筋肉痛になってしまったのは義姉の威厳を教えることも出来ず、右喜さんに申し訳無い気持ちになる。
しかし、今は蛮竜をどうにかしたい。
「(私の
左之助さんの肩と背中を我が物顔で独占する大鉾の蛮竜を見つめる。何処と無く煽るように左之助さんの歩みで動くソレに私は悔しさを感じる。
───だけれど、私は妻ですからね。
多少の接触は許してあけましょう。それに蛮竜はただの武器ですし。イチイチ反応して怒ったり悲しんだり悔しがったりするのは良くないことよ。
「景、疲れてるならおぶるぞ?」
「左之助さんは荷物に蛮竜まで持っているのに、私まで背負ったら大変な事になりますよ。それに実家に帰るわけですから、少しは成長した事を見せるつもりです!」
フンスと握り拳を胸の前で作って左之助さんに伝えると「なら疲れたら直ぐに言えよ」と頭を優しく撫でてくれた。そういう優しさのワンポイントが東京にいる乙女のハートを擽っちゃうんですよ。
「そういえば左之助さん」
「なんだ?」
「糸色家に着いたら必ず、どうしても守って欲しいことがあるんです」
「仕来たりとかそういうやつか」
「いえ。繋げ読みを止めて欲しいんです」
そう、糸色と書いて絶と読めるように。私の名前も絶景と読めるように、ウチの家族は絶に連なる二字熟語の名前が多く、特にお母様は大変な名前になる。
「そんなにか」
私の真剣さに苦笑する左之助さん。
もうちょっとだけ時期を置いて紹介したかったけど、流石に何年も会わずに「私達、結婚しました」っていう手紙だけを送るのは無理難題すぎたわね。
普通に手紙越しに怒られてしまった。
「左之助さん、行きの途中で蝶野爆爵の屋敷には行きませんでしたけど。帰りには寄ってくれますよね?」
「何言ってんだ。自分の女を恩があるとはいえ男の家に行かせるわけないだろ」
「いふぁい、いふぁいれふっ」
またしても私の頬っぺたを引っ張って叱ってくる左之助さんの顔はほの暗い快感を得ているような、ブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナのような甘く暗い快感を感じている顔付きになっている。
「柔けえな、本当に。もうちょっと飯を食えば体力も付くんじゃねえか?」
「そ、そうれふかね?」
ようやく頬っぺたを解放してくれたものの。やはり左之助さんは嗜虐趣味、私にちょっとだけ意地悪するのに楽しみを感じているのではないだろうかと悩む。でも、不安よりドキドキしてしまっている。
なんだか不覚に思える。