呂虔の手当てを終えた恵さんに呼び出され、私は左之助さん、もしもの可能性を考えてドクトル・バタフライにも連絡し、一緒に彼女の診療所へと来ました。
「先ず、結論を言うわね。あの男は普通の人間で間違いないけど。首の辺りに注射痕みたいなものがあったわ。多分、本人も知らない間に薬物による
「チッ、道理で足を折ったのに怒らねえわけだ。蛮竜の電撃受けても平然と突っ込んできたのもソイツの仕業だったわけだろ?」
「偏に言えばそうね。ただ、おかしいのは神経を鈍らせる薬なら武道家にとって致命的な誤差を生む筈なのよ。それが左之助の動きに付いていけた……」
確かに、神経伝達を誤魔化す薬を投与していたのなら呂虔のパンチやキックは鈍く遅い筈ですね。それなのに、あの人は平然としていました。
「ふむ、おそらく植物系のホムンクルスを使ったのだろう。大陸には朝鮮朝顔という毒花が咲いている」
「鎮痛剤の代わりに使われる毒花でしたか?」
「それなら麻酔の原料の一つでもあるわ……けど、量を間違えれば即死する可能性のある薬物を動脈に直接射つなんて信じられないわね」
ドクトル・バタフライの提示した朝鮮朝顔の名前を聞き、直ぐに答えに私と恵さんが答える。しかし、朝鮮朝顔の毒を薄めて神経伝達その物は弄らず、肉体のダメージだけを感じないようにするのは可能なのでしょうか?
そう疑問に思いながらも私は口許を押さえるように左手で顔を包み、思考を巡らせる。呂家の戦士を利用して、私達のところにやって来たのは確定。
毒花のホムンクルスを作った可能性はあり得る。というより、もう作ったと断定するべきですね。もっとも警戒するべきなのは遠隔で操作出来るか否かです。
そもそも何故彼を送り込んできた?
「……花粉の拡散で毒は広がりますか?」
「その点は問題ないわ。毒素を抜くために馬鹿みたいにお酒を飲ませて、新陳代謝を高める発汗作用のある食べ物を取らせているわ」
「ふむ、アルコールによる腸内洗浄かね。酒呑みの多い大陸の人間にとっては普通だが、即座にそれに気付いた高荷君の判断は同じ医学者として尊敬に値するよ」
「止してちょうだい。貴方にそれを言われると物凄く気持ち悪いわ」
「……糸色君、私は気持ち悪いのかね?」
「えと、あ、あはは……」
そうっと私は視線を逸らしました。
お髭はかっこいいし、ファッションもハイカラですけど。変態さんなのは事実ですから、私からは何も言えません。えと、その、ごめんなさいね?