機巧芸術家を名乗る外印の痕跡を追うために清国の書物を読み、人形劇や童話に登場する異形の存在を調べ、
ドクトル・バタフライやヴィクター・パワードの用いる錬金術とは系統的に異なるものの、前世の知識と照らし合わせると此方の方に親しみを感じます。
それに錬金術と綴っているけれど。
この本自体は科学の技術書として読めますし。幾つか折神を製作するときに流用した部分もあり、前世の現代科学に近しい人形のプログラム式もありました。
「……書き直されても分からん」
「無茶すんなよ、オッサン」
「お前もオッサンだ」
川路大警視や山県卿にも清国へと渡った外印という存在を伝えて、私の日本語に翻訳して清書した書物や手紙、交易の品々帳簿を見て貰っています。
「相楽、お前は妻を労れ」
「は?労ってんだろ。よく見ろよ」
川路大警視の言葉に半ギレになった左之助さんは当たり前のように私の両脇に手を差し込み、自分の足の間に座らせてワシャワシャと頭を撫でてくる。
無理に対抗しなくていいんですよ?
「糸色、外印という男の手記に載っている『本当の私』というのは何か分かるか?」
「妄想の延長線です。自分を物語の登場人物だと思い込んでいるらしくて、私の事を主人公と添い遂げる姫役に添えようとしていました」
「要するに妄想癖の酷い男だな」
「それは……事実ですね」
山県卿の言葉に頷きつつ、そうっと然り気無く差し出された漢語の書類を手にとって、直ぐに山県卿に書類を返しておきました。
私の名前を使って軍事戦略を進めようとする一派の存在は理解しましたけど。そちらは貴方達の分野ですし、怖いものには関わりたくありません。
「左之助さん、お腹撫でるのやめてほしいです」
「ダメか?」
「ダメです。擽ったいですし、文字がずれてしまうかもしれませんし」
「……仕方ねえな」
なんで不服そうなんですか?と聞けば川路大警視にも溜め息を吐かれ、山県卿を見るといつもの仏頂面ではなく哀れなもの
を見る目でした。
そんなに変なことを聞きましたかね!?
「景の抜けてるところは昔からだからな」
「……昔ってまだ十三年ですよ?」
「もう十三年な?」
むにむにっと頬っぺたを揉まれ、なんでそんなに怒っているのかも分からず、困惑していると左之助さんから差し出された手を握ると静かになりました。
やっぱり、なにかあったのでしょうか?
そう思いながら左之助さんを見上げる。