私達の役割は分かり、楯敷君の目的も概ね理解しました。幾つか納得できない部分や不審な点もあるのは事実ですが、信じるつもりです。
けど、私の『物語を繋げる能力』を渡す事は出来ません。渡してしまえば意味は失くなり、能力を熟し使いこなす事は出来ない。
この能力はそういうものです。
能力自体に意思を宿しているわけではありませんが、研究者の交さんと物書きの私では能力こ使い方は異なりますし、能力その物も使えない。
そうなると色々と破綻するんじゃないか。
あり得ると言えばあり得るわけですけど。すでに戻ってしまった楯敷君に確認する方法はありませんし。どうやって調べましょう?
「糸色君、ここに楯敷ツカサは来なかったかね?」
「ドクトル?」
少し焦ったように私を見下ろすドクトル・バタフライに視線を向けると、彼の目は妖しく光っているようにも見えてしまった。
いえ、きっと気のせいですね。
「ドクトル、楯敷君は来ていましたけど。少し世間話をするためだけに来ていただけですから、そう心配しなくても大丈夫ですよ?」
「糸色君、この際だから伝えるが、君は死ぬことを受け入れたことで以前のような人並み外れた危機察知能力が薄れている。それは、とても危険な事だ」
「そう、でしょうか?」
逆に考えると、怖いものが無くなったとも言えます。まあ、そう簡単に怖いものを克服できているなら、私はバトルヒロインになっているでしょうけれど。
三十路手前のバトルヒロイン。
自分で想像して悲しくなる。
いいえ、でも『NARUTO』の千手綱手もまた五十代を越えたバトルヒロインだと思いますし、きっと大丈夫ですね。大丈夫ですよね?
「糸色君の考えを否定するつもりはない。だが、一人の友人として言わせてほしい。君は他の人間よりも脆くひ弱な身体をしているんだ。あまり無茶な事はしないでくれたまえ」
真摯な言葉に少し申し訳無さを感じつつ、ドクトル・バタフライの言葉にうなずき、安堵するドクトル・バタフライに楯敷君に聞いたことを問うのは少し遅くした方がいいのかな?と考えてしまう。
明日も分からぬ身ですが、少しばかり危険だと思える事には関わらないようにしないとです。ドクトル・バタフライもそう言っていましたからね。
ただ、あまり深く考えるのはダメです。
出来るだけ意識を整えて、いつでも逃げる準備をしておかないと本当に危ないとき、また動けないかも知れませんし。なにより子供のトラウマになることは絶対に避けたいです。