外印の行動を探るために清国へと向かうことを選択肢に加えるものの。そう簡単に人間一人をあの広大な土地で見つけることは難しい。
何より清国と日本は戦争を始める。
その時に乗じて何かをする可能性だって否定できず、外印は私の病気の事を知らず、まだ生きていると考えた場合、更に余計な事件を引き起こす事もあり得る。
山県卿に伝えているけれど。
やはり、詳しく調べるには向かわないとダメです。
でも、そうなると船旅になるわけで、私はそうなると本当に辛くなるわけで、基本的に足手まといなのは分かっていますから……。
ボフンと枕に顔を埋めて、考える。
ここ数日ほど体調が優れず、左之助さんにも吐血しているところを見られてしまった。もっと、上手く隠しておけば良かったですね。
……それに他の人と違って、私に出来るのは思案する事だけ。知識を欲しがる相手に知識を与えるという取引作戦は絶対にダメな作戦です。
知識欲というものは貪欲。
「知りたい」という気持ちほど欲深いものはない。私だって知ろうと思えば思うほど『前世の記憶の保持』という「特典」を使いたくなってしまう。
使えば使うほど脳のキャパシティを圧迫し、私は危機察知能力の欠落、行動開始の鈍化も加わり、意識も曖昧で不完全なものになったりしています。
そうなると辛いので今は使っていません。
正確には使えない状態になりますけど。
「むぎゅっ」
「ん?ん!母様、ふんじゃった!?」
「だ、大丈夫ですよ」
うつ伏せで枕に顔を埋めていたから見えなかったんですね。それはお母さんのせいだから、悲しまなくて良いんですよ?
「ほら、お母さんのところにおいでえ」
「…ん、ごめんね?」
「良いんですよお……子供なんですから」
よしよしと布団の中に入ってきたしとりの頭を優しく撫でてあげる。
「今日はどうしたんですか?」
「ん、母様、元気無いから一緒にいたい」
「…………ごめんね、しとり」
しとりは聡い子だから薄々気付いているとは思っていたんです。いえ、ずっと、こんな調子の私が一緒にいたら、子供でも分かってしまいますよね。
「死んじゃ、いやだよ…」
「ごめんね、ごめんね」
私の布団に潜ったまま、そうすすり泣くしとりを抱き締めながら、私はただただ謝って彼女の事を抱き締める事しかできず、気がつけば泣きつかれて、しとりは眠ってしまっていた。
「……左之助さん、聞いていましたよね」
「ああ、聞いてたよ」
「ちゃんと、見ていてあげてくださいね」
「ああ、見てる。最後まで、ちゃんと見るよ」
それなら、良かったです……、