緋村剣心と明神君と飲みに行ってしまった左之助さんを見送り、しとりとひとえは薫さんのところに遊びに行ってしまっている。
久しぶりに一人の時間ですね。
ゆっくりと顔料を砕いて水に溶かす。
水彩画。ずいぶんとやっていませんでしたけど。やっぱり楽しいですね。本当はもっと「物語」を広めて、みんなに笑って欲しいんですけど。
交さんに渡してしまえば、その悩みは解消できる。ただし、そのデメリットとして、交さんは絵を描くために科学を捨てないといけない。
そうなると、今度は私の『前世の記憶の保持』という「特典」に対する問題を引き起こすわけです。この「特典」のおかげで「物語」は広まる。
しかし、交さんに「特典」はない。
私の「特典」を正確に受け継いでいる人がいるのかは分かりませんけど。しとりに遺伝している様子はなく、ひとえはサンピタラカムイ様の神酒と『前世の記憶の保持』が変質し、先読みに秀でた物を宿している。
未来予知。
いえ、あれは予測予知のほうですね。
「人には見せられませんね」
そう呟いて、私は水彩画を見る。
何故、ディケイドの冒頭を描いたのでしょう?
我が事ながら困惑し、キャンバスを持って図書館の更に奥。本を一定の角度と本数、動かさないと扉の現れない秘密の場所にキャンバスを置き、扉を閉じる。
どうしようもなく悩ましいですね。
本当は別の事をしたい気もする。
流石に描いていいものの、区別はつく。でも、どうしても描きたいものは世界規模の危険性を孕んでいるため、本当にどうしようもないわけです。
「ん?」
ふと、視線を感じて後ろに振り返ると私の描いていない、貰い物の絵が動こうとしていたため、ショドウフォンで『封』『印』と刻み、動けないようにします。
私の描いたものに当てられて、自我を持ったと考えるべきなのか。元々は四魂の欠片の気配を感じて、お店で譲って貰ったものではありますけど。
やっぱり、なにかあるのかしら。
そんなことを考えながら、左之助さん達が帰ってくるのを待ちつつ、また水彩画を書き始める。ここ最近は体調不良だったり、話し合いだったりと大変だったので、こういう時間は本当に落ち着きます。
漫画にすると世界は変わるけど。
こういう、のんびりと過ごせる時間は好きです。
左之助さんがいたら、もっと嬉しいですけど。彼も気を休める時間は必要ですから、これは当然のおやすみと考えるのが妥当です。
まあ、変な事に巻き込まれない。
家にいるのは、安全でもありますからね。