「申し訳ありません。取り逃がしました」
「いいえ、ありがとうございます。誰も死なずに帰ってきてくれたことのほうが嬉しいです」
そう言って忍風館と迅雷義塾の送ってくれた護衛の方々の言葉を聞きつつ、死なずの忍びに自動人形の劣化品を使ってきたという事は外印の組織はかなり潤沢していると考えるべきですね。
おそらく十数年間の内に百体以上の兵士を作っているでしょうし、屍を用いて人形を作ることに長けていた彼の技術を使えばフランケンシュタインも生み出すことも可能であると言えます。
「若様、どうします?」
「オレは若様って年じゃねえだろ」
「では、若大将」
「若じゃねえって」
そんなやり取りを続ける左之助さんと忍風館の生徒達の会話を聞き、私は迅雷義塾の生徒達に「相手は人形です。痛みを感じず、恐れを抱かず、殺しに来る相手です。倒し方は身体の発条や糸を切って下さい」と伝える。
「ハッ。して、その糸は何処に?」
「人間の筋肉や神経と同じ位置にあります。人を模倣する以上、造形は人間に近しいほど精度は高まり、なにより直しやすいです」
私の解答に納得する忍び達に、今回の給金を手渡していると、すうっと冊子が差し出された。私の描いた「月光条例」にサインを欲しがっていたようです。
「うひょおーっ♪︎」
「(忍びとは、いったい?)」
「先生、オレも読みたいものが…!」
「え?な、なんですか?」
「この『烈火の炎』の続きを読みたいのです!」
「…成る程、しとりですね」
「んっ!?ン゛ン゛ン゛ン゛ッ!!!」
しとりはブンブンと頭を振って否定する。が、私が見つめていると「ごめんなさい、母様」と、しっかりと謝ってくれました。
「……フフ、読ませてしまったのなら仕方ないです。次からは気を付けましょうね?」
よしよしと優しく彼女の頭を撫でてあげ、しっかりと謝ることの出来るしとりは良い子です。しかし、困りましたね。戦国に下手したら、ニョキッと火影忍軍が生えてきてしまいました。
ま、まあ、なんとかなるでしょう。
「(ドクトル達に連絡して、『烈火の炎』の事を相談しないといけません。サンピタラカムイ様の神酒の効能を勘違いされたら、どうしたらいいのでしょうか)」
いえ、それ以前に忍術バトルに私の子供達は付いていけるのかも分かりません。これは、本当にどうしたらいいんでしょうか。
「とりあえず、『烈火の炎』は出しましょう」
「有り難き幸せ!!」
そう言って彼は頭を下げ、ルンルン気分です。
私は、管理を強めないといけませんね。