「止まれ、オラァッ!!」
「があっ!?」
「ぬぐうっ!?」
両腕を無理やり振動させ、ダークディケイドとバスコ・タ・ギルに無空波を捩じ込み、動きを止める不破信二の強さに感嘆してしまいます。
「二人とも落ち着いて下さい。喧嘩するのは構いませんが、味方を呼んで大抗争を始めるのは禁止です」
「なんで言うこと聞かないといけねえんだよ」
「黙ってろ。バカが」
「楯敷君達の目的は私の能力という事は分かっています。ですので、来る日のヒーロー大戦を勝利に導いた方に私は命も能力も差し出します。二人とも問題なく戻る、それで構いませんね?」
そう言うとススハムや他の人達は困惑し、私の方を見つめています。もうすぐ尽きてしまう命です、せめて世界の均衡を守り、未来の子供達のために使います。
左之助さんが聞いたら、きっと怒ってしまう提案を私はしてしまっている。怖い。死ぬと分かっているけれど。それでも人に命を奪われるのは、とても怖い。
それでも私は……。
「アンタ、いい加減にしなさい」
「ススハムさん、良いんです」
「景、アンタが良くてもねェ!」
「良いんです」
良いんです、大丈夫ですから。
怖くても恐ろしくても受け入れましたから、もう大丈夫なんです。……それでも楯敷君に能力を奪われてしまえば、きっと私は無事ではありません。
「ですから、死ぬ直前に来て下さい。どちらが来ても私は受け入れるつもりです。世界を制したいのなら、愛する人を救いたいのなら、私の命を無駄にしないとだけ約束して欲しいんです」
「糸色君、それはダメだ。君を失ってしまうのは他の転生者にとっても、これからの物語を知るためにも必要不可欠な存在はんだ」
「ドクトル、すみません。ですが、もう決めました」
そう私はドクトル・バタフライに告げると珍しく困ったように溜め息を吐く。いつもは私を振り回している人が、こうして溜め息を吐いて、少し困っているところを見るのは可笑しいですね。
思わず、クスクスと笑ってしまう。
「笑い事じゃないんだがね」
「……もういいわ。好きにしなさい」
「ごめんなさいね。ススハムさん」
「謝るぐらいならしないでちょうだい」
怒った顔つきで私を睨むススハムに手を伸ばすも空を切るばかりで、彼女の手も袖も掴めぬまま、彼女はどこでもドアを通って北海道に帰ってしまった。
不破信二も幻想虎徹も退屈そうに帰る準備を始め、安居院さんは悲しそうに私の手を握ってくれ、「相楽さん、頑張ってね」と不安げに言ってくれた。
それだけで、十分です。