転生者の定例会議はおわり。
私はどこでもドアを通って自宅に帰ると左之助さんが居間に座って待っているのが見えました。恐る恐る、廊下を歩いて台所に向かい、手洗いとうがいを済ませる。
「おい」
「ひっ」
悲鳴を上げそうになった口を大きな手に塞がれ、身体を抱き締めるように包まれ、ようやく私は左之助さんが私の後ろに立っていることに気付いた。
「っはあぁ…!けほっ、けほっ」
「また、オッサン達と話し合いか?」
「……はい。楯敷君とも話し合ってもう私を狙わないと約束を結んで来ました。だから、もう大丈夫です。ずっと一緒に居て下さいね?」
「嗚呼、ずっと一緒にいる」
ゆっくりと左之助さんに抱きつき、心臓の音を聞かせて貰う。身体を支えて、背伸びしてもギリギリ届くか分からない胸部の下辺りに顔を押し付ける。
ドクン、ドクン、と力強い鼓動が聴こえる。
安心できる心音に身を委ね、抱き上げてくれる太く逞しい両腕に身を預け、寝室へと向かう。今日は少しだけ無茶をしてしまったから、ほんの少しだけ、ちょっぴりと疲れてしまいました。
「景、お前はオレのだ」
「……はい、私は左之助さんの妻ですよ」
こんな訳の分からない女を愛してくれて、幸せにしてくれて、ありがとうございます。そう言いながらも私は目を閉じていると、襖を開ける音を聞き、目を開ける。
「着替えるので降ろして下さい」
「手伝ってやろうか」
「……助平なのはいけませんよっ」
ペチペチと彼の手を叩いて降ろすように伝え、布団の上に畳んでいた寝間着の浴衣に着替えるために帯を解き、着物を脱いで、襦袢を脱ぎ、少し、ひんやりとした浴衣を拾って袖を通し、帯布を腰に巻いて、軽く締める。
「見ないでほしかったです」
「景の身体を見て良いのは旦那のオレだけだ」
しとりとひとえは良いんですね?と思いつつ、着物を畳んで箪笥の中に仕舞う。このとき、和紙に包んでいないと型崩れや虫食いに遇います。
まあ、包んでも虫食いに遇う可能性はありますけど。そう考えながら、眼鏡を外し、箱の中に仕舞う。
しとりとひとえの寝顔を見たかったんですが、ひとえはしとりのお部屋で一緒に寝ていますし。こっそりと会いに行くのもダメですね。
「景、布団はこっちだぞ」
「ありがとうございます」
左之助さんに手を引かれ、布団の上に座り、掛け布団を探していると私の身体は傾き、布団に倒れる。肩に手が置かれ、ぼんやりと左之助さんのシルエットが、うっすらと見える程度です。
ああ、そういうことですね。
「景、良いか?」
「……はい、どうぞです」