某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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蝶の羽撃きは止まらず 序

糸色本家の自室。

 

既に寝息を立てて眠っている左之助さんの隣を脱け出して、ぼんやりと夜空の見える窓を眺めていると月光を背負って空に立つ全身ホワイトタイツの変態がいた。

 

「(ドクトル・バタフライの正装?)」

 

『夜分に失礼するよ、糸色景。まさか私を素通りするとは予想していなかったからね。全く、Gentlemanたる者が嫉妬深いのは頂けないよ』

 

「フフ、それはそれで左之助さんが私を想ってくれている愛の大きさを感じれて嬉しいですけどね。蝶野さん、用件は世界の話ですね?」

 

『exactlyだ。一先ずは相楽君にはチャフを用いた幻覚を見せている。窓を開けて、この夜空の茶会へと来て頂けるだろうか?』

 

そう言って微笑んだ蝶野爆爵の言葉に従う前に、ぐっすりと眠っている左之助さんの頭を優しく起こさないように撫でて、私は窓を開けると。

 

キラキラした粒子状のチャフを階段に見立て、夜空の上に会談用のテーブルと椅子を用意した蝶野爆爵の目の前まで登っていく。

 

「改めて久し振りだね、Lady」

 

「はい。お久し振りです、蝶野さん」

 

私は柔らかな感触のチャフに座り、目の前に座って優雅に紅茶を楽しむ彼を見つめる。ホムンクルスの章印は何処にも見えず、まだ人間なのは分かる。

 

「安心したまえ。私はまだ(・・)人間だよ。尤もいずれ生まれる我が子、本物の蝶野爆爵に全てを託して私は死ぬつもりだがね」

 

「……やっぱり本人じゃなかったんですね」

 

「当然だろう?この時代に存在する二つの特異点は私と君だけさ。だが、相楽君の持つ『蛮竜』は遥か昔、ちょうど『戦国の三日月』の時代に転生した人物の選んだ特典であり、戦国乱世で覇道を突き進んだ蝶素敵な逸品さ」

 

そう蛮竜の出自を語る蝶野爆爵を騙る彼の実父は楽しそうにチャフで出来たティーカップに紅茶を注ぎ、私に向かって差し出してきた。

 

「さて、君に話そうと思っていたのは私の選んだ特典についてだ。先ずは謝罪しておこう、すまないね。私の神に願ってしまった特典は『統一された世界の物語に干渉できる立場』。───つまり、私がこのスターシステム化した世界を願った蝶本人だ」

 

そう言うと彼は「驚いたかね?」と悪戯を自慢する子供のように微笑み、自分の髭を撫で始める。この人のせいで私は世界に怯える事になったけど、そのおかげで左之助さんやみんなに出会える切っ掛けをくれた。

 

「おそらく英国(イギリス)で始まる『エンバーミング』はまだ大丈夫だろう。だが、米国(アメリカ)で始まる『GUN BLAZE WEST』に君達は向かうことになるよ」

 

「え?ど、どうしてですか?」

 

「此処に向かう前、緋村一行に襲われてね。危うく勘違いで捕まるところだったが、あの蛮竜の飛行を見てしまった連中が君達を狙い始めている。特に現在の錬金戦団と関わるのは止めておきたまえ」

 

ゆっくりとチャフを背中に集める彼は優雅に飛翔し、私の身体をチャフに包んで部屋の中に送り届け、月光を背中に背負ったまま空高く羽撃き、夜の闇に消えた。

 

 

 




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