蛮竜を呼び寄せ、外印の元へと向かう左之助さんに連れ立って緋村剣心と明神君の二人も歩き出す背中を眺めながら、私は中庭に立っている。
いいかえせた。
言い返すことが出来た。
その現実に安堵の吐息を吐いて、まだ眠っているしとりとひとえの部屋に邪な思いや意思で作られたものは入り込めないように結界を結ぶ。
けれど。外印の気持ちも少し分かります。
孤独は辛い。私も十三年前、この東京へやって来たときは孤独で誰にも話せず、誰かと関わりを持てるような胆力も度胸も無く、ひっそりと日陰にいました。
そこから引っ張り出してくれたのが、左之助さんで、私のために頑張ってくれた彼に報いるために……応えるために、ずっと頑張って来ました。
ようやく報われた……。
そう安堵していたとき、私の目の前に立つ人影に息を飲み、身体が強張り、震えてしまう。さっき左之助さんに殴り飛ばされた筈の外印が目の前にいる。
「武装錬金…!」
「正解だ。糸色景、今ごろ相楽左之助達は私の作った武装錬金と戦っている頃だろう。此処にはもう貴女を守る人間は一人も残っていないのです」
ジャリと土を擦る音が聴こえ、慌てて部屋の中に入るも障子と襖、雨戸が無惨にも糸状に伸びた水によって破壊され、私の身体の周りを水の糸が揺蕩う。
「逃げるが勝ち。もうその域ではない」
だんだんと狭まる間合いに空気を吸い込み、左袖の中に手を差し込み、ショドウフォンを取り出す。私の事をずっと観察しているのなら知っているでしょう。
「個魔の方!」
書く文字は『門』。
「待ってたぜ、この時をよォ!」
私の叫び声にしとりの影を通じて私の影に潜んでいた個魔の方は現れ、そのまま外印の身体を影の津波と化して、門の向こう側へと押し飛ばす。
門の向こう側は左之助さん達の目の前です。
「馬鹿な、用意周到すぎる!?ふざけるなよッ」
「次に貴方は───」
「「この私が人間なんぞに知恵で負けたのか」」
─────と、言う。
私はそう外印に聴こえるように言い、ゆっくりと口許に人差し指を立てて、しぃーーーっと静かにするようにジェスチャーを見せてあげる。
「子供が起きてしまいます」
「糸色景いぃぃぃっ!!?」
門の向こう側へと吸い込まれ、素早く閉じた門に向かって、ほうっと安堵の吐息をこぼす。やっぱり、こういう態度や雰囲気は似合いませんね。
「母者、アレどうやったの?」
「あれ?」
「あの言葉の先読みみたいなの」
「フフ、内緒です♪︎」
そう言って私は個魔の方の頭を優しく撫でてあげる。