某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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揮毫敷奏 序

「ウ~ン、どうしましょうか」

 

しとりの優しさに漬け込んでいる訳でもしとりにおねだりしているわけでもなく、一緒に読みたいから見せてあげていたわけですし。

 

妖怪に関する「物語」を読んだわけですし。ドクトル・バタフライも普段は世界の拡張する感覚を切っていますから、気付いていなかったとすると、かなり大変な事態になっていますね。

 

羽衣狐と白面の者、九尾の妖狐。

 

他にも狐の妖怪はいるわけです。

 

白面の者は妖狐ではなく陰の気によって生じた妖怪であり、負の感情を喰らって強さを増す妖怪。故に、慈悲の心を以て討たねばなりません。

 

まあ、お妙さんは私の想像を上回ったけど。

 

そんなことを考えながら文庫本サイズの小さな冊子の留め紐を結い終え、表紙の部分に文字を記す。

 

「しとり、ひとえ、此方に来て下さい」

 

「ん!」

 

「なにー?」

 

トタトタとひとえを抱えてやって来たしとりは書斎の本棚を本を戻すか悩んでいましたが、私の呼び掛けを優先してくれました。

 

フフ、本当に優しくて良い子です。

 

「二人に贈り物を用意しました」

 

「ん!ん?何も書いてないよ?」

 

「むう、ひーまだ字覚えてないよ?」

 

「フフ、大丈夫ですよ。ちょっとした仕掛けを施しているひみつ道具だと思って下さい。少し、二人と遊びたくて作ったものです」

 

「……母様、動いても大丈夫なの?」

 

「たぶん、大丈夫です」

 

うん、多分、大丈夫なはずですね。

 

しとりとひとえは優しいですけど。

 

「先ずは、遊び方を教えます。筆を用意します」

 

二人に鉛筆を差し出して、姉妹は受け取る。

 

「次に、絵や文字を描きます」

 

私が描いたのは「てるてる坊主」です。

 

すると、絵は実体化して目覚める。書斎の机の上に乗る程度の小さな姿ですが、動きは出来ます。手足はしっかりと書いていますからね。

 

「「おー!」」

 

キラキラと目を輝かせる二人も似たように「てるてる坊主」を描きますが、私の描いたてるてる坊主より小さかったりと差異はあります。

 

「動けと思えば動きます」

 

「んっ!!!」

 

「うごけー!」

 

二人の言葉によって動き始めるてるてる坊主。

 

「フフ、宜しいです。では、続いて意識をてるてる坊主に向けながら、刀や槍を思い描き、本に書いてあげるとてるてる坊主が持ってくれます」

 

私の言葉に黙々と絵を描く。

 

「ひーできた!」

 

「わたしも出来た!」

 

そう言うと二人の「てるてる坊主」に刀が握られ、私の「てるてる坊主」は籠手を嵌めている。

 

「いざや合戦です」

 

「「かっせーん!」」

 

トタトタと動き出す姉妹のてるてる坊主。

 

ゆっくりと構えを取る私のてるてる坊主は振り下ろされた刀を籠手で弾き、てるてる坊主は鉤突きからの渾身の正拳突きをしとりのてるてる坊主に見舞う。

 

「んえ!?ん゛ん゛ん゛っ!!ひーちゃん、わたしの仇を取って!」

 

「あい!」

 

ぷくーっと可愛らしく怒ったしとりはひとえに敵討ちを頼み、トタトタと駆け寄ってきたひとえのてるてる坊主に私のてるてる坊主は手刀打ち、脛蹴り、左の正拳突きを倒れたてるてる坊主に見舞う。

 

「「むううぅぅっ!!!」」

 

「…母者、式神で遊ぶなよ」

 

「こちらは式神ではありませんよ。モヂカラと霊能を重ねて作った識字法(意識して絵文字を描く製作法)です。モヂカラを利用している分、しっかりとイメージと集中力を必要とします」

 

揮毫敷奏。

 

糸色家のモヂカラは、絵や文字を具現化する。

 

そういうものですので教えるつもりです。

 

 

 

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