半月ほど頑張って京都の葵屋へとやって来た。
「帰りは船にしましょう。流石に子供達と左之助さんに迷惑を掛けすぎています」
「オレは気にならねえがな」
「ん!わたしは慣れてる!」
「ひーも歩けるよ?」
子供の体力と適応力の凄さに感心しつつ、よしよしと二人の頭を優しく撫でてあげながら、ほんのちょっと前に子供が生まれたと聞いていたんですけど。
「これは、年子になりそうですね」
「蒼紫様が張り切るからねっ!」
ポッと頬を赤らめて、いやんいやんと身体をくねくねさせる操さんに案内して貰い、十年前に泊まったときより豪華になった旅館の部屋に目を見開く。
ここまで綺麗だと少しだけ戸惑いますね。
まあ、それも良いことです。
「ん!久しぶり!」
「しとりちゃん、大きくなったわねえ。緋村の子供と許嫁になったんでしょう?大丈夫?あのひねくれた小坊主に虐められたら直ぐに言うのよ?」
「操、身体に障る。動くのは控えておけ」
「うっ、はーい」
のっそりと着流しのまま出てきた四乃森蒼紫の事を見上げ、ゆっくりとお辞儀を交わし、お土産の蔵書と色紙を差し出すと僅かに口角が上がった。
御庭番衆の人達は本当に「うしおととら」が大好きですね。未だに根強い愛読者はいますが、志々雄真実を除けば凄い気がしますね。
「(あとで比叡山にも行かないと……)」
「今日はウチの子を加えた絵襖を作ってほしいのよ。自分が居ないって泣いちゃったからさ」
「男児たる者、無闇に涙を見せるのは良くないのだがな。俺としても息子の姿を残して貰えるのは助かる。だが、いい加減にあの寝巻きの俺は消せ」
「「アレは家宝でございますぅ!!」」
操さんと般若が同時に声を張り上げる。
「あの色香を纏った寝巻き姿の蒼紫様を消すなんて勿体ないわ!!それなら、私達の寝室の押し入れと入れ換えて、紙を張り替えればいいのよ!」
「いいえ、操様は既に何枚も錦絵を持っているでしょう!?今日という今日はこの般若にもお目こぼしを頂けると伺っているのです!!」
「お前達、好き好んで自分の寝巻き姿の絵を見る男が何処にいると言うんだ。まさか俺の事をそんな風に思っているのではあるまいな」
これは長引きそうですね。
「しとり、ひとえ、荷物を置いたら温泉に行きましょうか。左之助さん、この近くに出来た光覇明宗のお寺の住職にお会いしてきたらどうですか?」
「んっ!!温泉!!」
「お風呂好き!」
「寺?……なんだ、そういうことか」
「はい。そういうことです」
私の言葉に納得してくれた左之助さんは『悪一文字』の法被に着替えて、新しく出来たばかりの光覇明宗のお寺へと向かって行きました。
無事に会えると良いんですけどね。