無事に絵襖は完成しました。
光覇明宗の建てたお寺の住職になった悠久山和尚と積もる話を進めているであろう左之助さんの事を思い出しながら、私は静かに画材を片付ける。
「……操さん、どうかしましたか?」
「景さんも翁みたいにならない?」
「なりませんよ。私の身体は私の物ですし、身体の中に生き物を取り込み、ホムンクルスになることは絶対にないです。私は人のまま死にたいんです」
そう言って操さんに笑顔を向ける。
出来ることなら長生きしたいです。ですが、その未来は変えることは出来ないと分かりきっています。運命を変える代償、あるいは集束点───。
私の死はキッカケに変化する。
怖いけれど。未来のために必要な事です。
見えるというのは辛いんですよ。
「ごめん。我が儘言ったわね。けど、子供のためにも少しは長生きしてよね。親友として、母親としてもまだまだ教わりたいことはいっぱいあるんだから」
「フフ、そうですね。まだまだ操さんともお話ししたいですから、せめてもう少しだけ、出来るなら四年は長生きしたいです」
「四年?なんで、四年だけ?」
「しとりと剣路君の元服だからですよ」
そう言うと操さんは直ぐに理由を理解してくれ。ゆっくりと私の事を抱き締めてきた。私の心臓と違って、力強く長生きできる鼓動が聴こえる。
しとりとひとえはこの音よりも力強く鼓動し、百歳を越えても長生きしてほしいです。そして、何の不安もなく無事に争い事や危険な事に巻き込まれず、平和に過ごしてもらえるだけで私は幸せです。
「景さんはやっぱり細いね。もっと食べなよ」
「お肉は苦手で……野菜なら食べますけど」
「般若達のアレが原因だったりする?」
「いえ、苦しかったけど。お肉をいっぱい食べるように言ってくれていたのは善意ですし。困ったりすることはなかったです」
まあ、胃もたれと吐き気はありましたけど。
「……ところでさ。景さんって本当に三十路手前なの?全然老けたりしないじゃない」
「いえ、ちゃんと老けてますよ?」
「ウソだ!!うぅ、この三十路手前とは思えないスベスベした素肌が老けているとかあり得ない!絶対に何か秘密があるんでしょう!!」
そんなことを言われても劣化するほど動いていないだけですし。運動なんて左之助さんと……コホン、少し気を緩め過ぎましたね。
変な事を口走るところでした。
「ねえねえ、教えてよお?」
「そ、そう言われても本当に知りませんよ?」
むにむにっと頬っぺたを触る操さんに、そう言葉を返すも許して貰えない。