「うっ、うぅ…はっ!?」
ガバリと気を失っていた姉畑支遁は上半身を起こし、キョロキョロと周囲を見回し、しとりとひとえの後ろにいるクズリのドンに気付き、笑顔を向ける。
「ストップです。私達の大事な家族に無闇に触ろうとするのは止めて下さい」
そう言うと彼の視線は哀しみに染まるも深呼吸し、ゆっくりと人当たりの良い優しそうな微笑みを浮かべ、すぐにまた申し訳なさそうに眉を下げる。
「申し訳ありません。初めて出会えた彼女に興奮し、少しばかり動転していました。ああ、私は姉畑支遁と申します。この実業学校の教職員として勤めているだけで、決して貴女と貴女のお子さんに危害を加えるつもりはなく」
つらつらと言葉を並べる姉畑支遁に小さく溜め息をこぼし、原作と同じく多少の人間性は持ち合わせていることに安心しつつ、彼の行く末に頭痛がする。
「初めまして、相楽景と申します。此方は娘のしとりとひとえ、家族のクズリのドンです」
「クズリ!北海道にいるという動物をまさか京都で見ることが出来るなんて…!」
ゴックン…!と唾液を飲み、ドンを見据える。
姉畑支遁のその態度にドンも何かを察知し、くるりと身体を翻してしとりの影の中に入ってしまう。しかし、「待ってえぇ!!私は君が大好きなんだぁ!」と姉畑支遁も続いて影に向かう。
が、しとりに避けられました。
「ん、なんかヤッ」
「ねーさま、このひとへんなのー?」
「ん、ひーちゃんも離れてて」
「私は、動物が、大好きなんだぁ……」
そう言ってすすり泣く姉畑支遁を哀れむ娘達の眼差しと、私に「かーさま、かわいそうだよ」と呟くひとえに私は渋々と頷いてしまいました。
ああ、断るべきことなのに、娘達の眼差しに逆らえないのは仕方ないです。そう、これは仕方なく手助けするだけです。
「姉畑先生、もしも動物になれるものがあるとしたら貴方は恐れずに使いますか」
「……そんなものが、あるのですか?」
困惑と期待の混ざった眼差しが私を射貫く。
怖いけれど。娘達の期待に応えたい。
「此方の動物を模した焼き菓子を食し、あ」
「はむっ!!」
私が説明するよりも早く姉畑支遁はひみつ道具「動物変身ビスケット」を納めた缶から、牛を模したビスケットを食べた瞬間、全身は黒く染まり始め、私やしとり、ひとえの身体を優に越える大牛になり、彼は涙を流しながら「モオォーーッ!!」と鳴き、何処かへと……牛舎へと行ってしまいました。
ウコチャヌプコロしに行ったんですね。あんなものを見る気はないので、さっさと離れましょう。
「服、脱げちゃったね」
「ねー」
「お散歩に戻りましょうか」
そう言って私達は移動することにしました。