姉畑支遁の恐ろしい事件から二日後。
私は京都府警察署の留置所にまだ留まっている姉畑支遁に面会する(正確には彼の証言の真偽を確かめる)かめに警察署へと来ています。
斎藤一に会えば直ぐに終わると思うのですが、会ったら会ったで怖いことになりそうです。そう思いながらも左之助さんと柏崎さんに付き添ってもらいつつ、留置所の格子越しに姉畑支遁を見据える。
「おお、おお!神よ!!」
「神様ではありませんね」
「ホッホッホッ。糸色殿の知識と技術は神に匹敵し得るとワシは思っておるがのう」
「ジイサン、あんまり景を困らせるな」
監視役のお巡りさんも姉畑支遁の様子に困惑し、私と姉畑支遁を見比べています。私の好きな人は人間ですし、相楽左之助という殿方です。
「今一度、あの幸福の時間をぉ!!」
「「「お前、コイツになにした?」」」
「ひうっ、な、なにもしてませんよ?」
監視役のお巡りさんまでもが姉畑支遁の狂乱ぶりに怪しさを感じ、私の事を見つめてくる。ちょっと危なさを中和するためにひみつ道具を使っただけですし。
あまり怖いことはしていませんよ。
「で、何した?」
「ひぃんっ!いふぁい!いふぁいれふ!」
なんだかいつもより痛く感じるぐらい頬っぺたを引っ張る左之助さんの魔の手から逃れ、誰も入っていない留置所の格子に背中を預けるようにしゃがみ、ジンジンと痛む頬っぺたを優しく擦って労る。
今日の左之助さんは意地悪です。
「糸色殿、教えてくださるかのう」
「……その、動物に変化できるお菓子を渡しました。動物が大好きだと言うので、一つだけ渡したら、なぜか走り去ってしまったんです」
「すまない。動物に変化できるお菓子があるのか?」
「あります、えと、これです」
袖の中から大型の缶を取り出すと格子の枠組みに顔をめり込ませ、必死に手を伸ばしている姉畑支遁に、みんなも気付いてしまったようです。
がんばれ、姉畑支遁
────と、頭の中に声が響く。
そこは応援しなくて良いです。
「お、おお、ジイサンが犬になった」
「妖怪の類いか?」
「ちがいますね。歴とした科学です」
「それ、ちょうだぁい!!」
「「黙ってろ。変態」」
柏崎さんは真っ白すぎるワンちゃんに変化し、モフモフとしています。ホムンクルスにも使えるということは、ドクトル・バタフライにも使えますね。
今度、使ってみましょうか。
「ゴホン。糸色殿の事は聞き及んでいますが、まさかここまでの女傑とは知りませんでした」
女傑ではないですねえ。