東京へ帰る頃にはもう夏の終わり頃。
あと少しだけ、もう少しだけと願ってしまう。
「(顔色、また悪くなってる……)」
白粉を塗り込んだように白くなってきた肌の色に気が滅入る。左之助さんもしとりもひとえも私のほうを不安げに見つめることが増えて来ました。
お店に立つことは出来ますけど。
まだまだ生きていける。
せめて、あと四年は生きたい。
そんな欲を出してしまうけれど。左之助さんも恵さんもドクトル・バタフライも頑張って私の治療法を探している。死ぬのは分かりきっています。
「ん、母様入っていい?」
「はい。構いませんよ」
ひょっこりと襖を開けて、ひとえと一緒に書斎に入ってきた姉妹の手には私の渡した本があり、もうてるてる坊主では役不足になってしまったようです。
「次は、お侍さんです」
筆を走らせ、しとりとひとえも私の描いた絵を真似るとてるてる坊主からお侍さんに進化し、二人の間で小さなお侍さんが斬り結ぶ。
ただ、元は墨なので飛ぶと大変です。
「ん!」
「ん!」
「「んんん!!!!」」
二人の込めるモヂカラが増して、お侍さんが大きくなる前に私の描いたお侍さんが刀を振るって、二人の動かしていたお侍さんは墨に戻ってしまう。
「母様!」
「かーさま!」
「フフ、二人が怪我する前に止めただけですよ?個魔の方も見ていたのなら止めてくださいね?」
「私は見るだけでいいよ。流石に痛そうだ」
ちゃぽんと影にまた潜る。
最近の個魔の方は私を見ることが減りました。痛ましいものを見るような眼差しは辛いですが、それも仕方ないことと割り切ってしまう。
「ひーちゃん、もう一回する?」
「する!ねーさまに勝つ!」
「ん!わたしは負けない!」
ポカポカとしとりを叩き出すひとえ。
可愛らしいんですけど、私からすると空気を切り裂く音がもうボクシング漫画の轟音めいて聴こえ、頬が引き釣ってしまいます。
私の可愛いしとりとひとえのパワーアップになんとも言えない気持ちになります。いえ、二人とも優しく可憐な近所で有名な美人姉妹ですからね。
「むう!当たって~!」
「ヤッ。ひーちゃんの手、痛いもん」
二人は座ったまま手を振っている。
動体視力と反射神経が超人レベルです。
左之助さんだけじゃなくて、姿お兄様の才能も受け継いでいると考えると二人ともすごく天賦の才能に加えて、沢山の努力をしていますからね。
「えいっ!」
「ん!あぶない!!」
ただのフックで突風は起こらないんですよねえ。
娘の成長が良くてお母さんは嬉しいです。