某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

1241 / 1241
左之助さん視点になります。





タイムリミットまで 序

「ケホッ、ケホッ」

 

今日も景は寝室の布団に眠って咳をこぼす。

 

日に日に弱る身体を支えて、青白くなった顔を見つめると申し訳なさそうに眉をハの字に曲げ、オレの差し出す水と薬を飲み、また横になる。

 

夫婦になって十三年と共に過ごしてきたが、コイツの隠し事はついぞ教えて貰えないのかも知れないと考え、汗の滲んだ顔を拭いてやる。

 

擽ったそうに目を細める景の顔色は悪い。

 

あと何年……いや、何ヵ月か分からないが、景はツカサに神通力を差し出して死ぬつもりだ。未来の子供の命を繋ぐために、景は死のうとしている。

 

オレはどうなる。

 

しとりやひとえをどうする。

 

まだ、しとりとひとえの晴れ姿も見てねえ。孫の顔も見ずに死ぬのかと怒りよりも、景の辛さを代わってやれない自分の身体が恨めしい。

 

好いた女も救えない。

 

「左之助さん、あったかいです」

 

「景は冷たくて気持ちいいぞ」

 

「フフ、それじゃあ、雪女ですねえ」

 

クスクスと笑う声は僅かに弾む。

 

志葉の大将曰く「糸色は志葉家に匹敵し得る火のモヂカラを持っている。それこそ己が身を焼くほどに強い力を、だ」と言い、そこから続けるように「それに、あの気質だろう。力の発露や発散など好むわけでもない」と教えてくれた。

 

この小さな身体に訳の分からない力が何個も備わっている。それが長い年月を掛けて、景の身体を蝕んでいるのだと言うことはオレも知っている。

 

それは、ひとえにもその兆候はあるらしい。

 

────だが、オレの頑丈な身体に似ているおかげで、しとりもひとえも長生きすると蝶野のオッサンはオレと景に告げた事は今でも覚えている。

 

「景、ゆっくり眠っとけ」

 

「んッ………はい、ありがとうございます」

 

ゆっくりと頭を撫でてやる。

 

景はよく人の頭を撫でて褒める癖がある。気がついたらオレもよく人の頭を撫でるようになっていたが、しとりもひとえもアの三馬鹿も喜んでいる。

 

剣路のヤツは不服そうだがな。

 

寝息を立てる景を起こさないように立ち上がり、寝室の戸を開けて、また閉める。日が傾き、茜色の差し込む縁側に向かい、稽古に励むしとりを見つめる。

 

姉ちゃんだからと無理しているのかとも考えたが、しとりはまだ景の事を諦めていない。オレも蝶野のオッサンも他の奴らもそうだ。

 

景はオレを太陽のように見るときもあるが、太陽にはいつも月が寄り添っている。月は太陽と一緒にいるものだ。だから死なないでくれ。

 

「とーさま、どうしたの?」

 

「……何でもねえさ。ひとえはどうした?」

 

目尻を擦って涙を拭い、ひとえを抱き上げ、胡座を掻く足の間に座らせてやる。しとりもひとえも景の面影を感じる顔立ちだ。

 

ずっと、お前らも傍にいてくれ。

 

今の父ちゃんは、ちょいと寂しん坊だからな。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

もしも「るろ剣」の世界に糸色景がいたらのスレ(作者:SUN'S)(原作:るろうに剣心)

「某剣客浪漫世界の物書きお姉さん」が本誌だったら?という感じのスレっぽいやつです。▼【本編】▼https://syosetu.org/novel/327970/▼【黒死の蝶の唯一留まる花】▼https://syosetu.org/novel/381420/▼【風薫る日陰に寄り添う妙花】▼https://syosetu.org/novel/387840/▼【か…


総合評価:973/評価:6.42/短編:384話/更新日時:2026年07月17日(金) 22:35 小説情報

何だかんだと恋運ぶ呪いの花(作者:SUN'S)(原作:らんま1/2)

▼【挿絵表示】▼一人は糸色家の娘、二人は本条家の姉弟だ。▼明治最強の血筋を受け継ぐ姉弟と、明治時代から世界屈指の名を連ねる糸色の娘は、これから巻き込まれるドタバタでハチャメチャなラブコメディーに笑い、呆れながらも、時には戦いながら歩んでいく。▼ちなみに姉弟は私の書いた「某剣客浪漫世界で私は物書きをする」および「もしも「るろ剣」の世界に糸色景がいたらのスレ」に…


総合評価:189/評価:6.25/連載:434話/更新日時:2026年07月18日(土) 14:25 小説情報

転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜(作者:だいたい大丈夫)(原作:るろうに剣心)

かつて京都を震撼させた「人斬り抜刀斎」と並び称された、新選組一番隊組長・沖田総司。▼労咳の運命を越え、彼女が手にしたのは平穏な明治の世と、亡き夫が残した一人息子・弥彦だった。▼しかし、その剣はまだ、錆びついてはいない。▼「たまには人を斬っておかないと、腕が鈍るでしょう?」▼昼は息子の教育に頭を悩ませる士族の未亡人。夜は月夜に紛れ、暗殺者として死体の山を築く。…


総合評価:3138/評価:6.78/連載:88話/更新日時:2026年06月07日(日) 22:37 小説情報

純潔の菩薩姫(作者:まだ半妖の夜叉姫観れてないんだよね)(原作:犬夜叉)

ある日私は、犬妖怪の長女として産まれ落ちた。


総合評価:11170/評価:8.67/完結:19話/更新日時:2026年01月06日(火) 21:00 小説情報

私、ヴィランを目指します!(作者:Sano / セイノ)(原作:僕のヒーローアカデミア)

人生二週目の女の子。彼女の瞳に映るのは、ヒーローたちが華々しく活躍し、悪逆非道なヴィランたちが跋扈するヒロアカの世界。これは、彼女が最強で最凶で最恐のヴィランになるまでの物語。▼※pixivでも閲覧できます(https://www.pixiv.net/users/1542351)


総合評価:823/評価:7.52/連載:58話/更新日時:2026年07月17日(金) 22:29 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>