目を覚ますと、私が居ました。
数千億の本の並ぶ空間に居ます。
「ここは?」
「
「なるほど、そちらの私は大変ですね」
そう話し合いながら私は彼女の後ろをついて歩く。見えるもの、聴こえるもの、言えるもの、そのどれもが新鮮に感じるものばかりです。
しかし、悪いものではありません。
「さて、何をお話ししましょうか」
本棚を動かして、机と椅子を用意する彼女の手慣れた動きに感心しつつ、向こう側の私に促されて、ゆっくりと椅子に座り、真向かいの彼女を見据える。
同じ体格、同じ声、同じ目、同じ人格、あと二人か三人もいるというのだから、とても驚きます。ただ、彼女らは左之助さんに出会えなかった私です。
「あれ?『へうげもの』を描いたんですか?」
「フフ、そっちは『信長のシェフ』ですね。ケンさんはとても大変な目に遇っているんじゃない?ほら、とら様もいますし」
「比古さんもいますし。それに、徳川幕府の設立も少し後世になりますからね」
そうお互いにクスクスと笑い合う。
同一人物ですから思考も丸ごと同じです。
「そういえば『月光条例』を描いたんですか?」
「えぇ、まだ序盤ですけど」
自分の声を聞くというのは新鮮です。
「…ここだけの話しになるんですけど。そちらの左之助さんはヤンデレ気質なんですか?」
思わず、そう聞いてしまった。
以前も聞いて羨ましかった首輪の他にもよく見れば手枷めいたリストバンドを着けていますし。歯形なんていうものもあります。
「フフ、羨ましいですか?」
「いいえ、私の左之助さんも素敵ですから」
「分かります。左之助さん、カッコいいですよね」
「はい。すごくカッコいいです」
ウンウンと一緒に頷いていると、徐に立ち上がった向こう側の私は本棚を動かして、本を取り出して私に差し出して来ました。
「『境界のRINNE』も描いたんですか?」
「えぇ、左之助さんが『死んでも離さない』と言ってくれたので、それならあの世でも一緒に過ごせるようにと描いたんです」
「胆力すごいですねえ……私、悩んでました」
「それもまた愛ですよ。しとりとひとえのために頑張るのは良いことです」
確かに、それはそうですね。
「それにエッチな『物語』の私は四人も子供を出産しているそうですし。プライスレスと考えても良いんじゃないですか?」
「待って下さい。そんな私は知りませんが?!」
え、えっちな、その、だなんて…!
エッチなのはいけません!!