「ッ、げほっ…!」
ぼんやりと目の前に浮かぶ人達の視線に気付き、目元の血涙をハンカチーフで拭き取って、口や鼻からも垂れる血を拭き取ると身体を確かめてみます。
「……成功か?」
「「成功ではありますね」」
私と向こう側の私は同時に答える。
しかし、自分の身体なのに少しだけ違和感を感じるのは能力を失ってしまったせいですね。楯敷君の右手の火傷も無くなり、この数分の間に何があったのかを把握していき、私は自分の胸に手を添える。
「心臓の負担が少し減りました」
「おそらく二年か、三年は寿命の問題は無いだろう。もしものときは私と向こう側の私で作り上げた糸色君専用の治癒能力特化型の核鉄を使う」
「心臓の代わりを務めるが、これも数年が限界だ」
そう言って私の事を案じてくれる二人に嬉しさと申し訳なさを抱き、向こう側の私を見る。きっと私も彼女と同じように目尻を下げてしまっています。
「糸色君、失礼するよ」
「は、はい」
私の頭を掴んだドクトル・バタフライの手は何かを探るように動き、少しだけ頭を握る力に痛みを感じながら、目を閉じていると身体の違和感が修正される。
「ふむ、『物語を繋げる能力』を二つに別けるという案は成功だったと言うべきか。しかし、身体を蝕んでいたという事実は消えない。糸色君、君達の寿命は二年か、三年ほど伸びただけで根本的解決ではない」
「それは、理解しています」
「そちらの私もそうですが、無理に抜いてしまえば命に関わりますし」
私の頬を撫でる向こう側の私の言う通りだと思い、ドクトル・バタフライのことを見上げて、寿命が少しでも伸びたのなら良いことだと伝える。
「一応、花嫁姿は見れそうです」
そう言うと、みんなの視線が痛ましいものを見る目に変わる最中、海賊服の楯敷君だけは「くだらない」と言い残して帰って行ってしまった。
───丸く収まりました、でしょうか?
「相楽カッケマッ、アタシが言うのもアレだけど。何度も無理して血を吐いている貴女を見るのは本当に辛いからやめてもらえる?」
「ススハム…さん?」
「……なによ」
「……フフ、なんでもないです」
ちゃんと来てくれたことに嬉しさを感じつつ、ゆっくりと私は身体を起こして彼女の手を握る。うん、やっぱり来てくれた本人です。
しかし、困りました。
「仲直りできたのに、鼻血まみれです」
「そうね。っていうより顔色悪いわよ」
「出血多量のショックが起きる前に増血剤を」
「焼き肉だ。レバーを持ってきたまえ!」
え?なんで、焼き肉……?