推定二年ほど寿命は伸びたものの、依然として私の心肺の病を治す手懸かりは掴めず、無事に『物語を繋げる能力』は交さんへと渡りました。
交さんが長生き出来ると良いんですが、そう考え込んでいると、私の帰ってきた音に気付いたのか。左之助さんが布団を押し退け、寝ぼけた顔で見つめてきます。
「おはようございます。左之助さん」
「……顔色が少し良くなったか?」
「はい。もうちょっとだけ一緒です」
「……そうか、そうかッ、そうなんだな!」
「えっ、あ、きゃあっ!?」
いきなり手を掴まれ、引きずり込まれたかと思えば力強く私を抱き締める左之助さんの嬉しそうな顔に、クスリと笑いつつも彼の頭を優しく撫でてあげる。
んッ、ちょっと息苦しいですよ。
「つぶ、つぶれます!」
「っ、悪い。また危なかった」
「けほけほっ」
ゆっくりと抱き締める腕を離してくれた左之助さんに安堵の吐息をこぼしながら、二年か三年の猶予を得た事を話し、その間に治療法を総動員して見つけ出すという事も伝えていく。
最初は安心していた顔が、だんだんと険しくなっていき、私の目を見る目はギラギラとしたものに変わり、私はお尻を畳に擦るように後ろに下がるも壁際に追いやられ、カタカタと身体を震わせてしまう。
「景、オレは言ったよな。無茶するなってよ」
「で、でも、必要な工程で「ん?」ひうっ」
言葉を遮るように左之助さんの大きな手が頬に触れ、眼鏡を外されてしまう。うぅっ、なんでこうなるんですか。私は治る手立ては見つかっていないけど、一先ずは延命したことを伝えただけなのにっ。
もにゅもにゅっと私の頬っぺたを両手で揉み始める左之助さんに戸惑いつつ、私も左之助さんと同じように彼の頬っぺたを触る。
フフ、ちょっとだけお髭でジョリジョリしますね。
「……えと、そろそろ寝ましょう?」
「もうちょい話そうぜ。な?」
頬っぺたを触る手の動きが押さえ込み、動けないようにする形に変わって、後ろ首と腰を抱かれ、布団の上に倒れ込む。
左之助さんの上に寝るような格好に恥ずかしさを覚えながらも、ゆっくりと彼の胸に耳を当てて力強く頼もしい心臓の音を聞く。
安心できる音です。
「そんなに身体くっつけて、誘ってんのか?」
「ちが、ちがいますよっ!?」
身体を起こして否定するも左之助さんはクツクツと笑いながら、私の腰や足を撫でてきます。そういうのは、よろしくないと思います!
とてもわる、くはないですけど。
やっぱり、まだだめですっ
身体が万全ではありませんし。